指名手配犯

第1話

休日の昼下がり、僕はボーとテレビのニュース番組を見ていた。

どうでもいい政治家の話や、芸人が結婚した話を取り上げていた。

次に流れたのが殺人の話だった。

その現場が近所らしく、お?と思いながらニュースを見つめた。

未成年者を狙った犯人は女の子を捕まえては暴行し、首を絞めて殺したらしい。

遺体で見つかった少女は皆、酷い状態で山に捨てられていたらしい。

僕は男だから関係ないや、と思っていると犯人の顔写真が画面に映った。

まるで鏡を見ているかのようだった。

髪型も、目も、鼻も、口も、輪郭も僕にそっくりだった。

いや、そっくりと言うレベルではなく僕だった。


世界には似た人間が三人はいると言うが、こんな近くで、しかも犯罪者と似ていることがあるのだと驚いていた。

ふと、ベルが鳴った。

立ち上がってモニターを見ると二人の警察官が立っていた。

冷や汗がぶわっと噴き出すのが分かった。

出るかどうか迷っていると、再びピンポーンと部屋に鳴り響く。

いくら似ていたとしても僕は犯人じゃない。

そう思い、ボタンを押した。

「はい」

「突然すいません。少しお話があるのですが、いいでしょうか?」

「あ、はい。今行きます」

何もしていないのに、うちにある動揺が隠せなかった。

玄関のカギを開け、ドアを開けた。

「大山孝則さんですね」

警察手帳を見せながら鋭い眼光を僕に向けていた。

「はい、そうです」

「ちょっと署まで来てくれませんか?お話があります」

「え?ここじゃあだめですか?」

「できれば署までお願いします」

頑なな態度で警察官は言った。

拒否すれば余計に怪しまれると思い、最低限の用意をしてパトカーに乗った。


それからどうしたかと言えば、僕は刑務所に入っていた。

僕が犯人ということになっていた。

必死の抵抗も空しく、こうなってしまった。

数年後に僕は死刑となる。7人も殺してしまったからだ。

刑務所にある鏡で自分の顔を見た。

どこからどう見ても犯人の顔をいていた。

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指名手配犯 @yanagi0404

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