神様に目をつけられるまでの話

 今日は入学式。新一年生の私は、桜の舞う中校門をくぐりたかった……のに。

 「雨かぁ……だっるー」

 小学校からの私の友だち、川崎結愛が言った。

 今日は私たち新一年生の新しい晴れ舞台なのに、朝から生憎雨だ。春だというのにジメジメしてて、桜の花びらもほとんど落ちてしまっている。

 私は小日向葵。結愛と同じく、今日から1年生になる。

 「でもま、あたしは葵と同じクラスだったしいっかなー。それに、受験勉強からよーやく開放されたわけだし?しばらくはほぼほぼ適当に授業受けて、あとは青春をエンジョイできるね!」

 「そうだねー。去年の夏は勉強しかしてなかった気がする」

 私と結愛は、雨のだるさからなのか愚痴しか話していない。ちなみに私は雨が大嫌いだ。雨だと髪もうまくまとまらなくなるし、そもそもジメジメしてテンションが下がる。

 ……あーあ。こんなこと考えちゃうのも、全部雨のせいだ。


 入学式も終わり、新しいクラスメイトや担任の先生の自己紹介もホームルームも終わり解散。

 朝より大分雨も止んできて、このままだったら夕方には晴れそうだ。今日は入学式だったから午前授業で、今はまだ昼間。

 「ゆーめ!ねぇ〜このあとどっか行かない?カラオケとか、ボウリングとか!」

 「あー、ごめん。あたし今日彼氏とデートなんだ〜」

 「な、なんだと……いいですねーリア充は。どうせ私に彼氏なんていませんよーだ」

 「葵はちゃんとすればかわいいのに……BLオタク隠せば?せっかくイケてる女子キャラになれる器なんだからさ?」

 「それは嫌!てゆーか無理!隠せない!私の声優BLボイスオタスは治したくても絶対hshs……」

 「う〜わ……なんてだらしない顔。そこさえ治ればいいのにね〜。じゃ、あたし彼氏待ってるから行くね❤」

 「うへ、うへへへ…………あ、え?うん、行ってらっしゃーい!」

 あっぶなー。つい学校で変なテンションになってしまうところだった。

 ……ま、とりあえず帰るか。早く帰ってBLボイスを……デヘ、ウェへへへ〜〜〜。

 「…………っおい」

 「うわぁっ、はいぃぃぃ!?」

 私がいかがわしい妄想をしてて、ちゃんと前見てなかったせいで男の人にぶつかってしまった。

 「あ、す、すいません。ちょっとよそ見……というか、考え事してて…………えへ、えへへへ………じゃなくて!ほんとにごめんなさい!では!」

 ぶつかったのはほんとに悪いと思ってるけど、今は一刻も早く人から遠ざからないと!今の状態の私を誰かに見られたら、高校生活おしまいだ!!(もう一人に見られてます。)

 「……何だアイツ。気持ち悪りぃ」

 ところが葵は、今日とんでもない人にぶつかってしまったのでした………


 「はあああぁぁぁぁあああああああ………………やっぱり尊いなぁ………」

 私は無事(?)家に着き、いかがわしい趣味をたっぷり楽しんだのでした。

 私の家は、私の通う高校から歩きで30分程度かかる距離にある集合住宅のマンションだ。

 私はまぁ、こんな趣味だから、もちろん馬鹿なわけで、将来の夢も目標もしたいこともまだなんにも決まってないわけで、とりあえず高校は卒業すりゃいいんでしょ?てなノリで、適当に結愛と一緒の高校を選んだわけだけど………その結果、家から遠い高校に通うことになった私は、両親の住む実家を出て、独り暮らしを始めたのだ。

 「いやー、今までは親がいて見れなかったアニメも堂々見れる………なんて幸せなんだ独り暮らしっ!」

 私は今までは推しが尊すぎて一通り叫んでた。(謎)

 「………喉乾いた…」

 叫んだせいで喉乾いたし、なんか喉痛い……

 「…嘘でしょ」

 飲み物が何もない………ピンチだ!今すぐ飲みたいというのに!

 「水道水………はさすがになぁ。買いに行くかぁ………はぁ…」

 最悪。でも、今はもうすっかり雨も止んでいて、夕日が綺麗なくらいだ。

 「せっかくだし、駅前のコンビニでコーレとポテホだ!今日はオールだな〜♪」

 そんなことを考えながら、私は自転車に跨ったのだった。


 私はこのとき、考えもしなかった。

 私がこのとき外に出かけたことによって、たんな悲劇に巻き込まれることになるだなんて。

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神様と三人の守り人 蝉時雨 @mnt310

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