東京メトロ ✕ 地獄編

地下鉄網がこれほどまでに張り巡らされたのは、「地下都市」の存在を隠すためであった。
いつもとおなじ時間。いつもとおなじ景色。いつもとおなじ電車・・・
そのはずが――――僕が今目にしているのは、
狐の面の少女、
鳥居の花道、
地下都市・地獄。
僕はいつのまにか、「いつもとおなじ」あの世界から足を踏み外していたようだ。

「ねえ、きみ、この電車はどこに向かってるの…？」
板張りの電車がゆっくりと動き出した。
少女は唐突に、自身とおそろいの狐の面を僕の顔面へと押しつけた。お面と学生服というなんとも珍妙な組み合わせだ。
「にいさま、わしと地獄廻りしましょかー？」

そんなこんなで、地獄の社会科見学が開催されてしまったのである。
少女とおそろいの面を着け、人成らざる者の領域を、僕は駆ける。