焦げ付いた君へ 三十と一夜の短篇第28回

白川津 中々

 僕の精通は洋画で流れた電気椅子の処刑シーンだった。

 座らされたのは金髪の美女だった。スパイという設定で拷問を受け、挙句電気で焼かれ殺されたのだ。その時に観た、恐怖と覚悟の混在した顔の艶やかっぷりったらなかった。乱暴に椅子へと投げられ、手足を固定され、頭に電極の付いたヘルメットを被せられて、そして……!


 まさに、電気が走ったかのような衝撃だった。僕は股座に手を指し伸ばして、生まれて初めて見る精液に切ない虚脱と恍惚を覚えたのだった。



 その日以来、僕は電気椅子に座る女の虜となった。あの映画に出てくるような気丈な姿勢を見せる者はいなかったが、恐怖に打ち震える女は実に、唆った。


 感電しながら死に向かう彼女達を見ながら僕はやはり射精した。その粘度は、色は、臭いは、精通の時と変わらず、強く、美しかった。そして、やはりあの時と同じで、身体に電気が走ったような快楽が訪れるのである。




 精液の臭いが、焦げた人間の臭いに混ざる。

 これだから、電気はやめられない。

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焦げ付いた君へ 三十と一夜の短篇第28回 白川津 中々 @taka1212384

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