二乗と四割の夢の中

レー・NULL

なので満たされませんでした

 人には夢がありました。空虚ではありますが、それはそれは希望に満ちていたのです。とても幸せな事でした。希薄な望み、叶うかどうかも解らない。そんな希望で満ちていたのです。些細な事であるのかもしれない、それでも、幸せでした。


 人には欲望がありました。膨れ上がる欲があったのです。それは動力となりました。無尽蔵にも見える動力によって、膨らまし続けたのでした。そこには活力がありました。油田を掘り当てるかのように、多くの望みが涌き出てきました。


 人には現実がありました。それは壁のようなものでした。何時かは限界に行き着くのです。絶望という名の壁に阻まれて、これ以上は見えなくなりました。涌き出る望みも絶たれました。人は限界を知りました。


 人には限界がありました。望みを絶つ壁がありました。夢の中で、希薄に漂うだけなのならば、見えぬ触れぬフワフワと、それだけの話でした。それでも、知ってしまったのです。人は希薄では物足りません、人は壁の中では足りません。なので、満たされませんでした。


 夢から出て来て、地に足つけて、そうして

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二乗と四割の夢の中 レー・NULL @ree-null

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る