楽園に、ただ一人

作者 馬場卓也

13

5人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

フリーライター・タクマのもとに舞い込んだオカルト誌からの仕事。それは、南海の離島で目撃された謎の生物の調査だった。
しかし、その依頼には裏があった。以前怪物を写真に収めた同業者・井上が島から戻っていないというのだ。
怪物伝説の真贋を確かめるため、そして行方不明の井上を捜索するため、タクマは島に赴く……というシナリオの怪獣小説。

南海の島というロケーション、島で出会った少女、そしてUMA……。
90年代くらいまでのエンタメに触れてきた人間にはたまらない要素の数々。
男の子の心をくすぐる展開をふんだんに盛り込んだ、おそらくはカクヨムでもトップレベルの短編SFです。必読。

★★★ Excellent!!!

一読し、このレビューを書きながら唸っている。
何という求心力に満ち満ちた物語だろうか。
オカルト、南海の孤島、UMA、現地で出会う少女という、時代が変わっても色あせることを知らぬ、実に魅惑的な要素の数々が、まるで玩具箱をぶちまけたかのような賑やかさで矢継ぎ早に繰り出され、あれよあれよという間に作品世界へと引きずり込まれてしまった。

無駄を徹底的にそぎ落とした文章は決して多くを語らず、読者に想像の余地を与えるとともに、まるで宙に放り出されるかのような余韻を残す……。決して目新しい要素で構成されているわけでもないのに、ラストで受ける衝撃の正体はいったい何だろう。まさにセンスオブワンダーである。

だが、それと同じぐらい、そこに至るまでの過程――南の島での生活描写や風景描写などのディーテル面もまた壮大で、格別の味わいなのだ。未開の地に対する憧れと畏怖とが交錯し、摩訶不思議な読書体験をさせてくれる。伝奇ミステリーの手法で構成された幻想文学といっても差し支えないかもしれない。

あくまでも短編として完結した作品ではあるが、その外側に広がっているであろう物語を思わず想起してしまう――この掌編をプロローグとして怪獣映画が一本とれてしまうのでは……という言い知れぬスケールを感じさせる。そんな魅力に満ちた、「怪物のような小説」といえよう。