第9話 モブに近づくために
自己紹介の後、学生証や教科書を貰ったのちに解散となった。お昼を一緒に食べないかと誘われたが、家で昼食を用意してもらっていると断った。
いつもは春斗と達樹がいたので、一人で帰るのは新鮮だった。
家に帰ると、まず手を洗い、自分の部屋に直行する。制服からTシャツに着替えたら、今度は違う部屋に向かった。ドアを二回ノックするといいよと声が聞こえたので部屋に入る。
「お帰りー、 俊」
「ただいま、
部屋にいたのは自分の義理の姉、
今もベッドの上でぐだーと寝転がっている。
「今日はどうだった?」
「ちょっと問題があったけど大丈夫だったよ」
「問題があったんなら、それは大丈夫じゃなくない?」
確かにそうだ。全然大丈夫じゃない。
「家でも外みたいにしてくれ」
「そとできちんとしてるから、家でだらっとしてるの。分かる?」
「まぁ、分からなくもないけどさぁ」
俺は、静姉の部屋を見回す。ペットボトルとか服が散らかっている。
「でも、これはないでしょ?」
俺は、ため息をつく。
「確かに。自分でも分かってるんだけど、どうしても出来ないんだよねぇ~、これが」
「まあ、いいや」
「そうそう、俊がやってくれるから、いいでしょ。それで問題ってどうしたの?」
「良くねえよ!それは後ででいっか。で、一人に見られたかも」
「やっぱり」
そうあきれたように言う、静姉。やっぱりなの!?
「男子?」
「いや、女子だ」
「はあ」
静姉はやれやれといった顔でため息をつく。
「やると思ったわ。俊って少しどじっぽいから」
「どじっぽい!? 初めて言われた気がするけど!」
「だって、言ってないもん。それで、どうして見られたかもしれないの?」
朝起きた出来事を話す。完全に自分の不注意だ。桜の木がきれいだったのが悪い! いや、悪くないけどさ……
「桜の木に見惚れてたら、無意識にマスク外してた。そしたら、風が吹いて、マスクが飛んでって、その先に女の子がいたの」
「なるほどねぇ。じゃあ、そのマスク外している間に他の女の子にも見られたかもしれないよ」
「いや、周りには誰もいなかったから、大丈夫」」
「マスクを外していたことにも気が付かず、さらには女の子がいることに気が付かなかった俊ちゃんが、何を言っているのかな?」
うっ、確かに。
「それで、どうするの? このままじゃ、同じこともう一回すると思うけど」
そう、だから俺は静姉にお願いすることにした。
「化粧でもして出来るだけ地味顔にしてほしいんだけど、お願いしてもいい?」
そう、化粧だ。地味になるように化粧をすれば、マスクがなくても、前髪がなくなっても大丈夫! 完璧だ。
「いいよ。俊がモテないような地味っぽい顔にしてあげる。でも、その代わり対価は払ってもらうよ」
そう静姉はにやりと笑った。俺は何をさせられるんだ?
「分かったよ。なにしてほしいんだ?俺ができることならなんでもいいぞ?」
「なんでもいいんだ? じゃあ、私の部屋が汚くなるたびに掃除してもらおっかな? それならいいよ」
「なんだ、そんなことか」
俺は安心した。この姉ならもう少し大変なことを言ってきてもおかしくはないのだ。
「よし! 契約成立! じゃあ、掃除頼んだ。これで私は好きなだけゴロゴロ出来る」
ああ、俺のせいでさらに静姉がダメ人間になっていく。
「じゃあ、やろっか。この椅子に座って」
「オッケー」
俺が椅子に座ると、静姉が道具を取り出してきて、化粧を始めた。
静姉はそれから二十分くらいかけて化粧を施してくれた。結果、手渡された手鏡には地味の中では顔が整っている方だなと思えるくらいの顔が映っていた。
「おお! 流石静姉!」
「でしょう」
少しどや顔だ。
「ありがとう、静姉!」
「どういたしまして。これも、win-winな関係だからね、部屋の掃除頼むよ」
とても嬉しそうにベッドに飛びこむ。
「じゃ、明日からお願いしてもいい?」
「いいよ。その代わり、今から掃除よろしく」
「どうせ断ったらしてくれなくなるんだろ。分かったよ」
俺は静姉の部屋を見渡しため息をついた。
俺はモブになりたい!~とあるイケメンは高校デビューでフツメンに~ 風上 颯樹 @kazekami
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