こたつは天国
青砥白
こたつは天国
〜〜〜5分前〜〜〜
「ただいまー」
「もう、どこいってたの!? 5分前切ったよ!」
「ごめん、ごめん。ちょっと探し物しててさ」
「早く、こっちきてよ」
「お前、もしかして、ずっとこたつの中で寝てたのか?」
「いや、さっき起きたけど。でも、最後の5分間は2人で一緒にこたつで過ごそうって決めたじゃん?」
「まぁな……」
「それに、それにね! 私が寝てる間に出かけるとか、ありえないから!」
「わりぃわりぃ。でも、出かける時、小声で声かけたぜ?」
「聞こえませんでしたー。でもさ、こんな時にどこいってたの?」
「これだよ。ほら、左手出して」
「えっ、ちょっと……。待ってよ」
〜〜〜4分前〜〜〜
「ほら、いいから手を出せって」
「はい……」
「おぉ、やっぱりぴったりじゃん」
「これ……。」
「俺と、結婚して下さい」
「……。」
「こ、こんな安物の指輪じゃ、ダメか?」
「ううん。可愛くて好き」
「じゃ、じゃあさ、へ、返事を聞かせてくれないか?」
「よ、よろしくお願いします」
〜〜〜3分前〜〜〜
「でな、お前のはすぐに見つかったんだけど、俺のが無くて遅くなっちまったんだよ」
「そ、そうだったんだ」
「俺のは、これでいいから」
「えっ? これ、ネジについてるやつじゃない?」
「ナットって言うんだよ。似たようなもんだろ?」
「でも、これじゃ……」
「ほら、早く俺の指にもはめてくれよ。時間ないんだから」
「う、うん……」
「よし、これで俺たちは夫婦だ」
〜〜〜2分前〜〜〜
「はい、これからよろしくお願いします。あっ、天国に行っても、よろしく」
「はぁ? こたつ以上の天国なんてあるわけないだろ」
「でも、私たち死ぬんでしょ?」
「しらね」
「これから大きな隕石ぶつかって、地球が壊れる。人類は滅亡するって。ほら、テレビでも中継してるじゃん。みてよ」
〜〜〜1分前〜〜〜
「どーでもいいわ、そんな事」
「どうでもよくないよ。ねぇ、私怖いよ」
「はぁ? 幸せすぎて怖いってか?」
「違う! 死ぬのが怖いの!」
「じゃあ、俺の手を握っとけ。絶対離すなよ。何があっても」
「離さないよ。何があっても」
〜〜〜30秒前〜〜〜
「愛してるよ」
「私も、愛してる」
〜〜〜10秒、9.8.7……〜〜〜
「こたつあったけぇな。俺、マジで幸せだわ」
「あれ、泣いてる?」
「泣いてねぇし」
〜〜〜3.2.1……〜〜〜
こたつは天国 青砥白 @chococyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます