世界を救う五分

二重世界

第1話

「五分だ、後五分でこの我の術式『ナイトメア』が発動し世界中の人間が眠りにつき我らの養分となる!そうなればこの世界は我ら魔族のものだ!」


世界を救うための旅、その旅の最終局面という場面で魔王が勝利を確信し高笑いをしながらとある事実を俺に告げる。

くそ、もう時間が時間がない!

ここまでの四天王との戦いで仲間達は全員倒れた。残っているのは俺だけ。何とか一人で魔王を倒すしかない。


「絶体絶命だな、英雄。いや、お前は英雄じゃないか」


「何!?」


「そうだろう、何せ世界を救ってこその英雄だ。それなのにお前は世界を救う事が出来ず、この魔王に敗北するのだから。貴様はただの周りに英雄と持て囃されただけの負け犬だ」


「くっ!」


反論したいが魔王の言っていることは事実だ。

今の俺に魔王を倒す力はない。今までは世界を救い仲間や家族達を幸せにするために頑張ってこれたがもう限界だ。

……俺には無理なのか。

そう思った瞬間、俺と魔王しかいないはずの空間に第三者の声が響き渡る。


「諦めるのはまだ早いわよ」


「誰だ!?」


魔王と俺は同時に声がした方を向く。するとそこには一人の女性が立っていた。


「貴方には早くそこの私の元上司を倒してもらわないと困るのよ」


「貴様ぁ、まさか我を裏切るつもりなのか!?」


予想外の事態に狼狽する魔王。

今現れた人物は三番目の四天王だ。確かに何故彼女が俺の応援を? ていうか、それ以前に何故生きている? 彼女は確かにこの手で倒したはずだ

いや、そんな事を気にしている暇はない。こうやって話している間にも刻々とタイムリミットは迫っている。


「そのまさかよ」


「人間なんぞ道具ぐらいにしか思っていなかった貴様が我を裏切ってまで何故人間の味方をする!?」


「そこの英雄様にはあんな事やこんな事までヤられたのだから責任を取ってもらわないと」


急に恍惚とした表情で頬を赤らめながら体をクネクネさせる四天王。

俺何かしたっけ? 全く心当たりがないんだが。


「いつまで喋ってんだよ。早く俺達も登場させろ」


「そうよ、あの馬鹿はあんたなんかに渡さないんだから!」


「そういうのは後にしてくださいよ」


こ、この声は……。四天王の後ろから現れた人物達を見て体が震える。

そんな馬鹿な。あいつらはもう死んだはず。


「あら、不思議そうな顔をしているわねダーリン」


ダ、ダーリン?


「私は生死を操る最上級の魔族よ。ダーリンの死んだ仲間を生き返らせるなんて朝飯前よ」


そういうことか。

って事は自分も生き返らせたのか。なんてデタラメな能力だ。


「さぁ、私にこれだけ手間取らせたんだから早く魔王様を倒してよね。貴方達が全員揃えば対魔王の必殺技が使えるんでしょ?」


ああ、その通りだ。皆が揃えばこの絶望的な状況だって覆せる。


「行くぞ、皆!」


「「「おお!」」」


こうして俺達はギリギリのところで世界を救う事が出来た。

だが俺達は知らなかったのだ。これが旅の終わりではなく、あくまで序章でしかなかったことを。

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