可笑しさと切なさは全部西瓜のせい

カフカの活写したグレゴール・ザムザは朝起きると毒虫になっていたものであるが、このお話はといえば「西瓜」男である。
へそから西瓜の蔦が生えた状態の全裸で愛しい彼女を迎えてしまう主人公のおかしみと苦悩はどうか読んで堪能してほしい。
酒を彼女に飲ましてあわよくば、なんてあらぬ妄想抱いてる場合じゃないでしょ、っとつっこみを入れたくなる。
だって現在進行形で西瓜男なんだから。

不条理SFであろうし、ホラーでもある。
男の体から生った西瓜の実を彼女が食べるさまに男は己の肉が食われているのだと、思考がたゆたう。
彼女と一つになる、という妄想は性的な意味もあろうし、明確にカニバルを想起させるものでもある。

西瓜、西瓜と連呼してしまったけれども、
主人公にとって難解なのは西瓜ではなく女心かもしれませんね。