配信時間、残り5分で伝えたいメッセージ

アーカーシャチャンネル

配信時間、残り5分で伝えたいメッセージ

 西暦二〇二〇年、海外では様々なイベントで盛り上がる中で――あるバーチャルゲーマーが自分のチャンネルで配信を行っている。

『皆さん、ゲームをプレイする時はちゃんとマナーを守ってプレイするべきです。そして、炎上、ネガキャンは駄目ですよ!』

 画面上に映し出されたのは、スク水、むっちり体系、左目に眼帯、ネコ耳の付いた軍帽、釣り目――色々と萌え要素を盛り込み過ぎなバーチャルアバターだった。

近年、様々な分野で話題となっているバーチャルゲーマーである。彼女が本当にこのような姿なのかは――お察しください。

そんな彼女の目の前にある物、それは家庭用ゲーム機ではなくて――パソコンである。

ちゃぶ台に置かれたパソコンと言う光景もシュールだが、それ以上に周囲は真っ白なのもシュールだろう。一種の手抜きかもしれない。

『――残りの配信時間も五分となりました。厳密には五分切ってるかな?』

 そして、彼女は若干慌てた様子でリズムゲームアプリを立ち上げる。

楽曲の方は――選んでいる余裕もないので、ランダム選曲にしたのだが――そこで別の意味で衝撃が走った。

何と、彼女は十二段階あるレベルで最大レベルの楽曲を引き当ててしまったのである。冷や汗が止まらないとは――この事か。



 他の曲を選び直す時間もないので、彼女はそのままプレイを開始、タッチパネルでのプレイなので――指の力を入れ過ぎると、パネルが割れかねない。

(前半は何とかなりそうだけど――)

 この楽曲は動画投稿サイトでも聞き覚えがあるので、全くの初見ではない。

しかし、この楽曲の譜面は一種の発狂譜面として有名だ。

(ここで捨てゲーをする訳にもいかない。それでは、他の視聴者にも悪い印象与えてしまう)

 途中でゲームを諦める事も可能だろう。配信時間の残りも二分を切っていた所だ。選曲までで三分位消費していた事になる。

そして、彼女は全力で譜面に挑んだ。その結果は――予想外の物だった。

『――みんなも捨てゲーとか、台パンとかしないように。その場の勢いで行動すると、それが炎上のきっかけになるからね』

 配信の方は、ここで終了している。気になる結果はと言うと――演奏失敗に終わっている。

散々な結果に終わって、ある意味で自滅なのでは――と視聴者の誰もが思ったが、リザルト画面にはB評価の表示があった。

つまり、演奏は失敗だったが――スコア的には視聴者の注目を浴びる事になったと言う。

勢いでプレイしたリズムゲームだったものの、視聴者にメッセージを伝えるには十分なインパクトを残している。



 後に今回のプレイはネット上のまとめサイトではなく、大手のニュースサイトでも取り上げられ――ネット上では様々な意見も飛び交う物となった。

《バーチャルゲーマー、リズムゲームで新記録! そして、視聴者にメッセージも》

 この記事が取り上げられた事で、ゲームマナーの向上が進んだ訳ではないのだが、一石を投じたのは事実である。

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