最後の5分間で
ぴおに
第1話
「ねぇ、ほんとにあと少しで終わりなの?」
「うん、そうだよ。もう少しで終わりだ」
兄は神妙な面持ちでそう言った。
まだ幼いふわふわのほっぺにきゅっと力を入れて、口を真一文字に結んで。
「終わったらどうなるの?」
弟は大きな瞳をさらに見開き
拳がへこんだぷくぷくのお手々で両頬を覆い
ひじをついて小首を傾げてきいた。
「全部なくなるよ。パパもママも」
兄はさらに強く口を結んで
強く拳をにぎっていた。
「そんなのやだよ」
さくらいろのぷりぷりした唇をへの字にまげて、弟は半べそをかく。
「だから、やらなくちゃダメなんだ」
兄は眉をひそめ、顎に梅干しを作って
深く頷いた。
「どうすればいいの?」
おやすみの時間の後
子供部屋を抜け出して
コッソリ覗いたリビングで
パパとママはTVを見ながら話していた。
TVではビルや家が壊れて、地球にインセキがぶつかって、全部なくなるって…
ママは「オムツじゃなくて、トイレでしてくれたら助かるのよね」と言っていた。
「もうダメだ、あと5分でインセキがぶつかる!助けてくれ!」
汗だくの男の人がTVの中で言う。
「ぼく、いってくる!」
「おにいちゃん、がんばって!」
あと5分だ!
地球を救わなくちゃ!
兄はすくっと立ち上がり
ベッドから降りて
パジャマのズボンを脱ぐと
オムツのままで走り出した。
「ママー!トイレでおしっこしたよ!」
「えっ、すごい!どうしたの!?オムツ卒業ね!」
「地球、助かった?」
「ん?」
最後の5分間で ぴおに @piony
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