第2話学校生活
「………」
終始無言で食べる朝食。何かしら1言喋るくらいあってもいいとは思う。だが、こんな生活がもう何年も過ぎれば、特になんとかしようとは思わなくなる。
「給食着玄関に置いてあるからな」
今日は月曜日だ。妹の学校は給食がある、というかほとんどどこの学校にもある。先週末に妹が持ってきたのを洗濯し、シワが付きやすいのでアイロンをかけてある。
「……」
と無言で席から立つと、隣の椅子に置いていたカバンを持ち、出ていった。そしてすぐにガチャリと玄関のドアを開けた音がした。
ずっと前はそんな態度に溜息も出ていたのだが、今は当たり前で溜息どころか表情1つ変わりもしなくなった。
食器すらも運んでいないので、あいつの食器も運び皿を洗い、水分を拭き取り食器棚にしまっていく。
部屋に戻って制服に着換え、持ち物を確認しおれも家を出た。
通学はバスで行くことにしている。電車でも行けるが、時間的な都合でバスの方がいいのと、このバスは行きも帰りも100円で金銭的にも優しいのだ。
学校のバスだから遠回りもしない。
バス停は駅にある。駅までは自転車で行き、駐輪場に停めてバスに乗る。
バスに乗ると同じ学校の生徒しかいないが、乗る人はいつも決まっているので知ってる顔がほとんどだ。
だが、その中に1人知らない生徒が乗っていた。今までバスで見かけた事が無いというか校内でも見た事がない。
誰だろ……と思いながらも後ろの一人用の椅子に座った。
椅子にただ座ってボーッと辺りを見回すと、あの女の子は俺の隣の二人用席の通路側に座っていた。
髪は茶髪で短くしていて清楚で優しそうな雰囲気を出している。 うん…、やっぱり知らない。
彼女は携帯をいじっていた。彼氏とかとラ⚫ンでもしているのだろうかと、どうでもいいことを考えた。
俺もカバンから携帯を取り出し、イヤホンをぶっ刺してアニソンを聴き始めた。
俺は普段、こういう時は音楽(アニソン)を聴いて時間を潰している。
バスが校門前に止まると、前の奴らからどんどん降りていく。前のやつが立ち上がり通路を歩き始めたので、俺も立ち上がった瞬間、ちょうど彼女とぶつかりそうになった。
あまりのシンクロさに苦笑いした俺は、
「すみませーん……」
と軽く頭を下げ、先に行けと手振りした。彼女はペコリと愛想笑いをし、
「いえ、大丈夫ですよ」
と言い、先に通路へ出てバスから降りた。俺もそれに続いて降車した。
教室までいつも通りで歩き、教室の扉を開けて席につく。席は窓側の一番後ろにあるため、授業が暇な時は窓から外を眺める事がよくある。
窓から外を見れば海があるわけでもなく、ただ中庭があるだけだ。たまに技能士のおっちゃんがうろうろしているという事ぐらいしかない。
昼休みとなれば、そこにはリア充が集まりイチャイチャした雰囲気が三階にも伝わってくる。
この学校には、あそこで昼休みにくつろいだり自由にできるのリア充の特権という暗黙の了解がある。
もちろん俺は入ったことすらない。クラスには十人くらい常連さんがいるが……。
とそんな事を考えているうちにカバンを片付け、朝のHRが始まるのをひたすらボーッと待つのが俺の日常だ。
今日はやけに男子が騒がしいので、少し聞き耳を立てよう……。
「てか2組マジで羨ましいんだけどぉ」
藤倉がマジで羨ましそうな顔をして、というかほぼ泣きそうな顔で松崎に言った。
「それな!なんたってあの可愛い柏倉美彩(かしわぐらみさ)が転校してきたんだもんなー……」
ちくしょーと二人で肩を叩き合い慰めあっていた。
こいつらとはたまにゲームを一緒にする仲だが、一回も彼女ができたことのない、非リア組だ。
も、もちろん俺もだけど……。
ていうか転校初日で他クラスに名前知られてるとか、有名人なのかと疑問に思った。
ま、そんな事俺に関係無いしな……。
そう結論づけ、あまり深く考えることは無かった。まぁおそらく、同じバスに乗ったあの子だとは思うけど……。
可愛かったし。
「はーい!始めるぞー」
担任が勢いよく扉を開けて中に入り、皆にそう言った。
余談だがこれも最初の頃、まだこの教師が担任になったばかりの頃はこの扉の音に、クラスの大半がびっくりしていた。
今ではすっかり慣れているが、たまにビビる奴は何人かいる。
「須崎くん……」
隣の席の朝倉に声をかけられ、顔を向けるとどうやら相談事があるらしい。
俺は頷き、HRが終わり1時限目の前の十分くらいの空き時間に言ってくれと朝倉に言った。
「で、話って何だ?」
HRが終わった後、俺は隣の席に座っている朝倉に質問した。
朝倉は、
「あのね、今日転校してきた柏倉美彩は、私の幼馴染なの。後で話かけたいんだけど、何年も話していないから、そのー……、付き添いしてくれないかな?」
「へー、朝倉の幼馴染なのか。うん、いいよ。放課後?昼休み?」
「昼休みは人多いから、放課後で…」
「うい。(了解という意味)」
俺はその時、なぜ人目を気にするのかわからなかったので、朝倉に質問することにした。
「なんで人いないほうがいいんだ…?別に隠すような事でも、無いんじゃないのか?」
俺が質問すると、朝倉は黙り込んだ。少し時間が経つと話す気になったらしい。
「こんな普通な私と、あんなに可愛い子が幼馴染って、釣り合わないから……。少し嫌なの……。あっ、美彩じゃなくて他の人に知られるのがね?」
「ふーん……。俺は普通に朝倉も可愛いし釣り合うと思うけどな…。ていうか釣り合う釣り合わないとかそんなの関係無いと思うけど」
「えっ……?須崎くん今何て言ったの?」
「だから朝倉も可愛いって言った」
俺が同じことを言うと、朝倉は頬を染めて恥ずかしがっていたが、俺は正直に思った事を言っただけなので何とも思わなかった。
ていうか、俺は2次元の妹に全てを捧げているので、3次元の人は可愛いとは思うけど、恋愛的な感情は持たないのが、現状だ。
放課後、俺は噂の転校生と再会する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます