邂逅

城崎

エピローグ

君はやっぱり、帰ってしまうんだね。


大丈夫だよ。悲しくっても、君の選択を否定するわけにはいかない。悩み抜いて出した選択なんだろう? 君の表情を見れば分かるよ。迷いなんて見せないのが、君らしくていい。送り出しても、問題ないみたいだ。

で。終わりに話すのが、わたしで良かったのかい?


いや、君が良いんならいいんだ。わたしを選んでくれて嬉しいよ。

君のいた1ヶ月。人生の中では短い期間に、たくさんの思い出をもらったね。

覚えているかい? 君が初めてわたしの前に降り立った日を。

君は知らない世界で、いまにも泣きたいようにしていたね。無理もないよ。

君の世界には、魔物なんていないんだろう? なのに、最初に見たのが不気味な生態ばかりだったんだからね。 

え? 今は平気だから、もう言わないでって? 

分かったよ。時間は限られているからね。振り返るのはやめよう。

君が帰ってからの話をしようか。帰ってから君は、今までの話を誰かにするかい? 


違う世界での物語になるくらい、君の活躍は大きなものになった。でも、魔物がいない世界で、いる世界の話をしたって信じてはもらえないだろう? だから気になってね。


へえ、話さないのか。君は友人を信頼して話すような気がしていたのに。理由も聞いていいかな?


確かに、思い出に縛られたくはないね。前を向いて、君は『チキュウ』で君の人生を送るんだ。わたしたちなんてすぐにでも忘れたほうがいい。


ん? 忘れられるはずがないって? だろうね。わたしたちの物語を1人で抱えていくなんて、大きすぎるって思うよ。いつか誰かに、冗談のつもりでも言わないか心配だな。


『心配しなくても、帰りたいだなんて思わないよ』?

なんだか、わたしの心配なんて分かってたって言いたげだね?

わたしの考えは分かりやすい? 君の考えだって、わたしには分かりやすいよ。

ちなみに、わたしは言うよ。好きな人に、自分の活躍を覚えていて欲しいから。


笑わなくなっていいじゃないか。わたしにだって、好きな人くらいいるよ。君が帰ったら、好きだって告げてみせる。もう、お互いに好きだって思うしね。


わたしが話しすぎてしまったね。君が笑ってるから、良かったんだろうね?

もう時間かな。じゃ、元気で。


「また会おう」。

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邂逅 城崎 @kaito8

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