ねえ、聞いてよ。
さとう
哀れを愛せ
.
「あぁ疲れた」
そんな言葉と共に背負っていた重いリュックを下ろした。
何をするわけでもなく、とりあえず勉強机とセットになっている椅子に腰掛ける。
やっぱり家が1番落ち着く。息苦しくなくて、肩身が狭い思いをしなくて済むんだから。
はぁ、と1つ息を吐いていつもと同じく、少し渋くなった窓を開けた。
この瞬間、この瞬間が一番好きだ。思わず笑みが零れ落ちた。
ある意味気持ち悪いくらい清々しい気持ちに襲われる。なにもかもに解放された気分だ。
網越しに見える景色は何も変わらない。そう、でもそれが好きなんだ。
白く濁るカーテンがゆらゆらと揺れる。綺麗だ。今まさに、僕の世界が綺麗に揺れている。
頬を優しく撫でる爽やかな風が、向こうで動き回る草木が、スッと傷んだ心に馴染んでいく。この瞬間だけが、どうしようもなく哀れな僕を、どうしようもなく愛せる時間なのだ。
網戸にぴったりくっつくカーテンを避け、綺麗な世界を壊したあとに、僕は肺いっぱいに愛おしい僕を吸い込んだ。
ねえ、聞いてよ。 さとう @a_o_
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