アキレスと俺

成井露丸

アキレスと俺

 ――軍神アキレスが超音速で空飛べるなんて聞いてないからっ!


 俺はチートスキル超高速飛行術式ウルトラ・ラピッド・フライを使って地上三千メートルを高速で飛行し、逃げている。後方、約五十キロメートルから、軍神アキレスが超音速マッハ1強のスピードで追いかけてくる。

 神様、マジ本気じゃん!

 生じるソニックブームの衝撃に空を飛ぶ鳥たちが巻き込まれてバリバリ死んでいく。俺の超高速飛行術式ウルトラ・ラピッド・フライじゃ音速には届かない。マッハ0.5程度が限界だ。このままじゃ、後5分で追いつかれる計算だ。

 追いつかれたら奴の無言の一撃で有無を言わさず殺される!


 残された時間はあと5分間!


 チートスキル万能計測アブソリュート・メジャーで、アキレスの位置と速度をリアルタイムで計測する。俺の万能計測アブソリュート・メジャーによる計測に誤差は無い。状況把握のために奴と自分の現在位置を脳内地図に標点ポイントとして記録した。


 幾つかのチートスキルと共に異世界転生した俺は、魔物や悪人をぶっ倒して大躍進。モテモテのハーレム状態を築いてきた。なのに、最近、戦うべき相手が神様になって、急に難易度上がりすぎじゃね?


 ――どーする……俺ッ!?


 そんな事考えてたら、さっき地図上に記録した標点ポイントをアキレスが通過した。


 ――やばいやばいやばいやばいやばいッ!


 現在位置を新たな標点ポイントとして記録しつつ更に逃げる。奴の方が二倍速いのだ。絶体絶命じゃないか!


 ――どうすれば逃げ切れる?


 アキレス相手に取り得る対抗手段を片っ端から考える。全力の攻撃魔法をぶっ放すことも考えたけど、アキレスはあらゆる攻撃魔法を無効化キャンセルする特殊能力を持っている。俺より神様の方がチートじゃん! 万事休す!


 なんとかで済む対抗手段は無いものか?


 さっき設定した標点ポイントを、またアキレスが通過。


 ――また、近付かれたッ!?

 

 同時に俺は現在位置を標点ポイントとして記録する。


 今設定した標点ポイントにアキレスが到達するまでに、俺は何処まで飛べるんだろう? 奴の速度は俺の二倍だ。だから、奴が2の距離を飛ぶ間に、俺は1だけ前に進める。つまり、奴が標点ポイント間を移動する間に、俺はその距離の半分の距離を逃げる事は出来るってことだ。


 とりあえずは、よしッ!


 その場所に標点ポイントを俺が設定したとしよう。アキレスは超音速で、その場所まで飛んで来る。しかし、奴がその標点ポイントに到達した時、俺はまた、そのアキレスの飛行距離の半分だけは少なくとも先に逃げられるってことだ。


 またまた、よしッ!


 ――ん? ちょっと待てよ? 俺、追いつかれなくね?


 奴が俺の居た場所に到達した時には、俺はもう少し前方に居るじゃん? その次も同じ。設定した標点ポイントにアキレスが辿り着いた時には、俺は少しだけその先に進んでいて新しい標点ポイントを記録している。

 これが無限に続く。


 ……それなら、アキレス、永遠に、俺に追いつけね~ってことじゃん!


 もしこれが対抗手段になれば、俺はアキレスにことになる! やったぜ!

 

 最後のへと変わったのだ!


 万歳! 軍神アキレス恐れるに足ら――グハッ!

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アキレスと俺 成井露丸 @tsuyumaru_n

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