第3話 朝ごはん
「……」
それなりにいい気分で眼が覚める
「……腰いてぇ」
昨日は床で寝たんだった。
自分が普段使っているベッドを見る。そこには
掛け布団を蹴飛ばし、腹を出し、よだれを垂らしながら寝ている小娘がいた。たまに腹を掻き、なにかをむにゃむにゃ喋っている。
無言で小娘に布団を掛ける。
「……本当にこいつが俺を殺すのか?」
再び布団を蹴飛ばした小娘を見ながら呟く。
まぁ、時空間を操ったとかで壊した家を一瞬で直していたから只者ではないんだろうが。あと足速い。
……飯の支度するか。
ーーーー
「んみゃ?」
「起きたか」
テーブルに料理の乗った皿を並べていく。
「んおー……なんかいい匂いする」
小娘がベッドからテーブルへと這いずってくる。無駄に速い。怖い。キモい。
「朝飯だぞ。ほら、しゃんとしろ。そこに水あるから顔と手を洗ってこい」
「んぁー」
謎の鳴き声を上げる小娘。するとどこからか出現した水が顔と手を覆い、高速回転した。女の子にあるまじき顔を晒していることに気づいているのだろうか。若干溺れてない?数秒後、その水が弾けそのまま消え去った。
……こいつ顔と手を洗う為だけに無駄に高度なことやってないか?魔法すげぇ。
「はぁ、すっきりしたわ!
……すごく美味しそうな匂いがするわ!」
めっちゃ笑顔である。
……昨日見た笑顔がフラッシュバックする。
「まあとりあえず食え。昨日からなにも食ってないだろ? 生憎と今は野菜しかないがもぎたて新鮮だ。味は保証する」
今日の朝飯は、
色々野菜のサラダ特製のタレをかけて、
ニラのおひたし、
大根ステーキ、
キャベツの味噌汁、
納豆、
ご飯
魚が欲しくて近くの川に寄ったが魔物に荒らされ魚が居なくなっていた。後で必ず殺す。魚の代わりに大きく切った大根をステーキにした。あと納豆。これで最後だ。町にいって補充せねば。
「ほうほう、めっちゃ美味そうね。涎じゅるじゅるだわ!」
表現。
「そいじゃ、いただきます」
「いただくわ!」
まずは、味噌汁を啜る。心地よい味噌の香りが鼻から抜ける。とてもあ「うま!こ、これうま!うまいぞ!んぐんぐぅれもうまぁ!」
目の前でワンパク、を超えて飢えた獣のように怒涛の勢いで飯を食らう小娘。
うま! うま! と。
……
「ちゃんと口の中の物飲み込んでから喋れ」
「だって! うまいぞ! これも! これも! 全部うまい! これお前が作ったのか! すごいな!このネバネバして臭いやつもうまい! 全部うまい!!」
ああ。……にも……こんな……………
昔を思い出し、呆けていたら小娘の皿が空になっていた。
それを物哀しげに見つめる小娘。
「……俺の分も食うか?」
「!!! いいの!?」
体を乗り出し聞いてくる。
「ああ、存分に食え」
自分でも驚くほど優しい声音だった。
その言葉に目を輝かせ再び獣となる小娘。
見ているだけで腹が膨れる気がする。
「それにしても、随分と美味そうに食うな。しばらく飯を食っていなかったのか?」
「んぐぁもきゅごくん! ぷはぁ。んーどうだったかしら?」
お、エセ淑女に戻った。
「それよりも! これ! この緑のシャキシャキ!これ超うまいわ!」
ニラを指指しその場で跳ねる。
「ニラか」
「ニラ! これニラっていうのね! 呼びやすくて覚えやすい。そしておいしい。最強ね!」
そう言ってニラを頬張るニラ娘。
ニラを知らない? 一般的な食材だと思うが……
服に無頓着な自分でも分かるくらいにえらく上等な服を着た小娘。どっかの貴族の娘で家出をしたのだろうか。貴族はニラを食わない。うむ勉強になった。
……あれ? そう考えると今の俺の状況まずくないか?
今じゃ数える程しかいない貴族の娘かもしれないんだぞ?憶測でしかないが。小娘の生態を見ているとその可能性が限りなく遠くへ離れていくが。
まぁ、
どうでもいいか。
ひたすらうまいうまいと飯を頬張る小娘。
こいつ、幸せそうだし。
再び空になりそうな皿を見て席を立つ。
……もうちょい作るか。
こうして、久しぶりの、
楽しい。そう思えた、そんな朝ごはんを終えた。
わたし邪神!あなたを殺しに来たわ! @yomdayo
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