最終話 私の隣のあの席で
「あれ、泣いてる……? 」
さくらが朝、目を覚ますと頰に涙が流れた。服は制服のままで、髪もボサボサの状態で寝たようだ。おまけにだいぶ目も腫れている。
とりあえず着替えようとすると見覚えのないネックレスが目に入った。
「こんなの持ってたっけ……? 」
思い出そうとすると頭がズキズキと痛む。
何か、大切なことを
忘れている気がした。
◾︎ ◽︎ ◾︎ ◽︎
あの日から13年、私はまだ違和感の正体を探している。先生として、あの高校の教室で。
でも、夕日の差し込む教室で、何度あの席に座っても、胸が押し潰される感覚は高校の時から変わらない。
いつものようにあの席でうつ伏せていると後ろから声が掛かった。
「先生……?」
聞き馴染みのある声が響く。
確かにその瞬間、世界が止まった。
私の耳が、心が、体が叫ぶ。
絶対聞いたことないのに懐かしい声。
「そこ、俺の席です」
声の方に顔を上げると目が合った。
眠たそうな目で
目の下には小さなクマ
そこまで見て視界がくもる。
涙を溢れ続ける私に
「だ、大丈夫ですか!?」
そう言った彼からは、
フワッと
クロワッサンのかおりがした。
隣の男子は小説家でした。【1900pv】 なのか はる @nanokaharu
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