僕の隣に

一ノ清永遠

僕の隣に

僕の隣にはいつも泣き虫なお前がいた

鼻水をだらしなく垂らして、すぐにいじめられた〜なんてワンワン泣き喚くお前が嫌いだった

だけど、僕を「おにいちゃんおにいちゃん」と呼んでついて回るお前がいる景色が僕にとっては当たり前だった



僕が中学校に上がって、お前が小学5年生になってから

少しだけその関係は変わった、僕には僕の世界が出来て、お前にはお前の世界が出来た

僕がトランクスを履き始めて、お前がブラジャーをつけ始めて兄妹なんだけど男と女に変わったんだ



僕が中学2年になって、お前が小学6年生になって

お前の友達に告白された、大人しくてすごく可愛い子だった

あんまり深く考えないでお前以外には内緒にして、付き合い始めた

小学生と付き合うなんてあんまりに恥ずかしくて周りには言えないから

手を繋いで、キスまではした

だけど、その子には「なんか思ってたのと違う」って別れられた

結構好きだったからかなり凹んだけど、お前に笑い飛ばされて少しだけ元気が出た

感謝してる、ありがとう



僕が中3で、お前が中1になってから1年間だけ一緒に中学校に通った

ただ単に楽だから通ってただけなんだけど、周りからはからかわれたっけ

僕がシスコンで、お前がブラコンってバカにされたけど

でもそれで構わない、どこかそれが誇らしく思えた



翌年、高校に上がってからお前に彼氏が出来た

部活の先輩で、真面目そうな彼氏でなんだか意外だった

お前はチャラチャラしたイケメンが好きだと思ってたから

だけど、お前が先輩とヤッたって知った時は少なからず動揺した

僕がまだ童貞だったからとか、そういうのじゃなく

お前がエッチをした事が激しく不気味で、どうしようもない違和感があったから



僕が大学に上がって、同じサークルの彼女が出来た

優しくて、真面目で、包容力がある彼女だ

デートをしたり、ゲーセン行ったり、カフェ行ったり、子供じみたデートだってお前にバカにされたけど

それでも結構、彼女からは評判良かったんだぞ?

でも、僕は彼女を抱こうとは思わなかった

彼女から求められても、応えることが出来なかったんだ

でも、理由はすぐに分かった



彼女とは結局別れて、久し振りにお前と花火を見に行ったな

子供の時みたいに秘密の場所で、特等席で手を繋いで見れて嬉しかった

本当はずっと、お前とこうしていたかったんだ

ずっと変わらないまま、あの時のまま

お前が隣にいるあの風景が、僕は好きだったんだ



子供の時、白い砂浜で青い海が見てみたいってお前は言ってたよな

いつか見に行こうって約束したまま、それを果たせないままにしていてごめん

今は車を運転出来るようになったから、観に行くことが出来るね

父さんも母さんも今は寝てるけど、もしかしたら二人で旅行に行ったなんて知ったらびっくりするかな?

お前って旅行に行く時、車の中で大概寝てるから正直話し相手いなくて寂しいよ

これからはずっと一緒にいよう、あの時みたいに

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僕の隣に 一ノ清永遠 @sat0522

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