第2話 深い森にやって来た親子
水平線に、夕陽が顔を沈めてゆく。空にも、この人さらいの森の中にも、夜の足音が近づいていた。
「おかあさん、待って!」サラは早足の母に追い付くだけで必死だった。先ほどから、足に何度も丸い石が引っかかり転びそうになる。雨も降っていないのに、ぬかるみが多くブーツやワンピース、ロングのソバージュヘアーや水色の大きな瞳の目尻にまで泥が飛び散っている。一方、母は長いスカートを膝上までまくりあげ、上手く石をかわしながら、無言で突き進んでいた。一時間くらい歩いただろうか。もうすっかり暗くなったころ、森の外れの崖っぷちの不気味な小屋にたどり着いた。
「今日から、ここがあなたの新しい家よ」
母は言った。サラは唖然とした。
「ここが?」
小屋は2階建てだが、屋根は傾きカラスが住み処を作っている。白いペンキで記号のような文字が家の壁に塗られ外壁はボロボロ。今にも崩れ落ちそうであった。
母娘は、古い友人を頼ってこの港町にやってきた。しかし、いくら尋ね歩いても、この人物を知る者には会うことはできなかった。
友人から送られてきた手紙には、家を譲渡する念書と鍵が同封されていた。鍵を差し込むと鈍い音がして家のドアが開いた。
ローリングタウンの丸い石 @sakuemi
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