記憶は経験になるかならないか

 SFを書いている中で、記憶についてギミックを凝らしてみようと思ったことがあります。脳内の電気信号、蓄積されたゼロと1、バックアップやコピー、脳の容量数テラバイト。

 ここにその情報を売買する主人公が現われた。
 断片、細分化された限定情報を他人に移す『記憶移植業』という表現は、果たして記憶の譲渡が必ずしも移譲先の経験になるとは限らないものである可能性をほのめかされている。

 物語はこの、少しの差異が持つ怖さを秘めたままゆっくりと始まっていく。どのような問題が立ち上がり、どのようなリアクションで楽しませてくれるのかが楽しみです。

 面白い!