最高のエンディング
河條 てる
最低のエンディング
止まない雨のせいで古びた社に閉じこもり続けた。
こういう時僕は何を言うべきか知っている。
「くだらない」
そうそれだ。
「死ねよ。クソ野郎」
彼女が僕の心を言い当てた。
彼女の手首を縛られたままの姿はひどく滑稽だった。
顔を上げ、静かにでも確かに怒りを目で訴えている。
「それは反抗するという事かい?」
そう言うと彼女は目を伏せた。
「どっちつかずの反応は困る。きちんと僕に返事をしてくれ」
ギリギリと歯が軋む音が響く。
屈辱感に満たされる彼女。
「さあ、君は生きたいのかい?それとも死にたいのかい?僕に教えてくれ。」
「いい加減にしろよ!何時まで縛ってんだよ!!そろそろ手首は痛えし、腰もいてえしよぉ」
妙に喧嘩腰の彼女の言葉はやっぱり荒い。
「ごめんね。でもやっぱり君の肢体を撮りたいんだよ」
「お前のよく分からん言葉は聞き飽きたよ」
引き攣った笑顔でそういう彼女は冷や汗すら流していた。
「はっきり言うとね。肢体、撮らせてくれそうなの、幼馴染の君ぐらいなんだ」
「はは、じゃああたしはあんたの実験台ってこと?」
「バレてたってことだね」
少し僕は笑ってみせる。
彼女は目を大きく広げて、わかりやすく驚いて見せた。
その様子がたまらなく面白かった。
「冗談だろ?流石に…」
「君の肢体が見たいって言うのは僕だけじゃないでしょ。はいチーズ」
その時の写真に題名をつけるなら「裏切りと女」がいいだろう。
女の浮気に激昂した、そんな感じだ。
最高で、くだらない2人の写真だった。
この古びた社で手に入れられたのは幸せだったと僕は思う。
変わり者の僕と付き合ってくれる彼女。
たった1人だけど僕と彼女のヘンテコな付き合いを笑いながら支えてくれる友人。
僕は最高とまではいかないかもしれないがかなりいい人生を送れた。
彼女に今日伝える言葉は決まってる。
「ねえ」
「――― 」
☩肢体を死体と替えて、もう一度逆さからこの作品のタイトルへと向かって見てはいかがでしょう。
最高のエンディング 河條 てる @kang
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