雨の中の5分間
天崎 瀬奈
僕の彼女
その日は彼女と出かけていた。
初めてのデートだった。
花柄のワンピースに身を包んで笑う彼女は綺麗でこんなにもいい子と
自分は付き合っているのだと思うととても誇らしかった。
時間よりも早くついてしまったと微笑んだ彼女はとても可愛らしく遅れてごめんね、そう言えば早く来た私が悪いのだと照れたようにはにかんでいた。
いつも彼女は待ち合わせよりも早く来ている。
周りの視線が刺さる。そりゃそうだ。
こんなにも可愛い子がいれば誰だって惹かれる。
僕がいつも行っているレストランも、公園も、ジムも、彼女にとってもお気に入りの場所だったという偶然を聞いたときは以心伝心だと舞い上がった。
思えば出会った時からそうだ。
好きなもの、好きな場所、好きな歌、好きなこと、、何から何まで僕と彼女は同じだったのだ。それが付き合うことになった理由でもあるのだけれども。
好きな人と過ごす時間というのは思ったよりも早く過ぎ去るものだ。
彼女を電車のホームまで送る。
あなたに出会えてよかった。大好きだ。貴方しかいない。
嬉しいくらいに愛の言葉を囁いてくれる彼女に少しばかり照れながらありがとう、そうかえせばこちらをみた彼女と目があう。
ずっと一緒にいてくれる?
その空間に声は響き渡る。
周りの騒音をかき消してまで小さいはずのその声は聞こえた。
そう問いかけて来た彼女にもちろんさ、そう返す。
電車がホームに入ってくる。
「 愛してる 」
そう微笑んだ彼女はその場にいる誰よりも美しかった。
直後俺の世界は赤一色になった。
煌々と光るライトに照らされて鋭い痛みが全身に走る。
これは僕の最初で最後のデートの話。
雨の中の5分間 天崎 瀬奈 @amasigure
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます