五分間なぞなぞ[イチャラブS○X編]

柳人人人(やなぎ・ひとみ)

五分間(1200文字)の映像が流れます。これは『ナニ』の五分間でしょう?


 とくとく、とくん。

 小さな胸が高鳴りました。少女はその背中に寄りかかりながら囁きます。


「私たち、結ばれたのですよね」


 愛する者同士、寄り添いあって身をあずけます。結婚して初めての夜は、きらきら、きらり。星がとてもきれいな夜でした。今宵は月に見守られながら一人で寝るには大きいベッドのうえで愛について語りあうのです。


「ああ。薬指のリングがある限り、二度とキミが黒ずんで汚れることはない」

 少女と指を絡めて男が愛の誓いを語ります。

 少女には結婚したという実感がまだありませんでしたが、胸の音だけは真実でした。


 とくとく、とくん。

 胸が重なりあいます。


「じゃあ……下半身を見せてくれるかい?」

 男の言葉に少女は指先でスカートをたくしあげて白い肌を見せました。

 スカートがまだ半分しかめくれていませんでしたが、男は四つん這いになって足先へ口をはこびます。


 男は脚が好きでした。

 少女は生活も心も貧しく、ついでに胸も貧しかったですが、すらりと滑らかでうつくしい脚を持っていました。一目惚れした男は忘れられず、町中をかけずりまわってようやく少女の脚を探しだしました。控えめに言って気持ちのわるい脚フェチでした。


 とくとく、とくん。


 少女の人生は今までしいげられるばかりでした。いつか人の上に立つことに憧れ、よなよな復讐を夢見て興奮しました。踏みにじられてまで、左足薬指の指輪に口づけて喜ぶ男の姿はとくに快感を覚えました。

 男と少女の脚は完全に夫婦でした。残念ながら、こんなにも愛しあっている光景が夫婦以外なはずありません。


「エラ様。ああ、エラ様」

 男はあえぎます。呼ばれるごとに穢れる気がしましたが、灰色の穢れた名前に戻ることはありません。


「ああ! キミの足はそのままでも美しいが、しかし! 靴を履いてくれ。そして、どうか力いっぱいに私を踏みつけてほしい!」


 もっと、もっと。靴の味は今まで食べたどんなものより冷たく快いものでした。


「あなたが履かせてくださいませ。私を見つけだしてくれたあの時のように」


 もっと、もっと。身を震わせて腰が抜けてしまうまで脚を求めつづけました。


「ああ! ああ! このおみ足の召すままに!」


 とくとく、とくん。

 気持ちのいい少女は踏みつけることに狂いました。気持ちのわるい男は踏まれることに狂いました。


「そんな姿をお見せになって良ろしいのかしら。王子さま」


 男は自分が王子であることを忘れてました。王子であるまえに変態でした。この国の行く末が心配でしたが、少女にとって目の前のオスをいじめる以上のことなど、もうどうでもよくなっていました。


「従順なあなたにご褒美をあげましょう。甘い蜜をあげましょう」


 湿ったその唇で少女が言いました。

 少女は下着をするりと脱ぎすてます。そして履かされたガラスの靴で男を踏みながら、半分しかめくれていないスカートをすこしずつ、すこしずつたくし上げて






――――童話『灰かぶり姫シンデレラ』より、最後めでたしのあと五分間ワンシーンから抜粋

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五分間なぞなぞ[イチャラブS○X編] 柳人人人(やなぎ・ひとみ) @a_yanagi

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