異世界ではなく・・・
だんだん感覚が戻ってくる。ふと、自分の頬が微妙にふさふさしたものに触れていることに気がついた。
「ん・・・っ」
ようやく動くようになった自分の手を支えに起き上がると、どうやらソファに寝かされていたことに気がついた。
「きゃああああ!!!」
急に目の前で大きな声が響く。驚いて目の前を見ると、セミロングの黒髪がふんわりカールしているものの、まだ垢抜けない可愛い顔をした女の子が、向かいにあるソファで真っ青な顔で叫んでいた。
「う、動いた・・・!いやああああああ!!!!!!」
まるで畑を食い荒らすイノシシから逃げ惑う農家の女の子のようにあわあわとしているその少女は、腰を抜かしたようにペタペタとさまよう。
「いや、裕子ちゃん、その反応普通死んでる時に言う台詞だからね・・・」
「なんだ裕子、相変わらずお前は五月蠅いな・・・。お、起きたか」
なんだかドタドタと他の人が歩いてくる音がする。
「ここどこだ・・・?そもそもさっきのは一体何だったんだ・・・?」
俺は全く状況がわからず、ずきずきと痛む後頭部を支えながらうめくようにつぶやいた。
「ま、そうだよね。とりあえず、座って話そうか。一ノ瀬 慶、くん?」
謎のツッコミをしていた、背が高く爽やかな男の人がそう言ってニコッと笑った。
大二病棟へようこそ! 北原 さとわ @satowa
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