通勤に電車を使っていると利用する電車はいつも同じ時間になりがち。乗りこむ車両も同じところを選ぶから、互いに顔は知っている程度の縁ができる。ある日、駅で死亡事故が発生した。そのとき、いつもの乗車メンバーはそれぞれ別の思いをもっていて―― 空間と時間を共有していてもストーリーは人それぞれ。死亡事故をキーワードに、キャラクターごとに異なる心境がていねいに描かれていて引きこまれます。
凄く面白い!それぞれの視点での物語の最後に、ぐっと来ました!文章もサクサク読めて、続きが気になる展開でした。
立場も境遇も異なる通勤電車の乗客たちの目線で描かれる、電車の中で起きた「ある事件」に関する物語。短編ながらにもキャラクターもしっかりと立っており、ぐいぐい引き込まれて読んでしまいました。物語のラストは驚きました。よく出来た海外のショートフィルムを見終わった後の満足感に似た読了感を味わえました。
通勤電車に乗り合わせた乗客が、自分が見たものを思い思いに語ります。話が進むうちに、複数のカメラで撮影した立体映像のごとく、一つの立像を形作ります。作中の登場人物は互いの心中を知りません。知っているのは読者だけ。そのすれ違いと緻密な設計をお楽しみください。
いつも同じ時間の電車を利用している乗客たち。それぞれの視点からある出来事が描かれます。ページをめくるたびに真相に近づいていく緊張感、最初はぼんやりとしていた映像がどんどんと鮮やかになっていくスピード感は短編小説の魅力ですね。約6,400文字の中で、複数の人間関係が描かれ、また最初に投げかけられた謎が最終話でしっかりと回収されるのは見事の一言。練られた構成を味わってみてください!(カクヨムWeb小説短編賞2020“短編小説マイスター”特集/文=カクヨム運営)
珠玉の短編集。オムニバス形式のこちらの作品は、それぞれの主人公たちが短い中にもしっかりと描かれており、緻密に計算されたストーリーに息を呑みます。それぞれに人生があり、それらが紡ぐのは一体どんな模様なのか。ぜひあなたの目で確かめてみてください。