スケジュール。

紀之介

どうしてですか!

「─ 検査結果は どうなのだ?」


 南部氏の質問に、担当医は顔を歪めた。


「残念ながら…最早 手の施しようが無い程、病気が進行しています」


「そうか」


「…かなり前から、症状が出ていたと思うのですが」


 何処からか取り出した手帳のページを、南部氏が捲る。


「3年前の5月18日 からだな」


「え!?」


「その日から昨日までは、病院に来る事が出来なかった」


「ど、どうしてですか!」


「─ スケジュールが びっしりと埋まっていたからに決まってる。」


「は?!」


「私は…事前に予定されてない行動は、一切取らない主義なのだ!」


 呆然とする担当医に、南部氏は顔を近づけた。


「で、私は…後 どれだけ生きられるのだ?」


「長くて、数ヶ月かと…」


「具体的な月数は?」


「さ、3ヶ月ぐらい です。」


 再び手帳を開く南部氏。


 ページを繰る音を、診察室に響かせる。


「無理だな」


「─ はい?!」


「残念ながら その時期は、既に予定で埋まっておる」


「い、いや! そう言う問題では!!」


「直近で空いているのは…5年と13日後だ。」


----------


 予定を入れた南部氏は、スケジュール通りに病死した。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スケジュール。 紀之介 @otnknsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ