二連休の二日目

 おはよー。僕は今、二連休の二日目を絶賛満喫中である。

 普通の人は土日+海の日という三連休を満喫しているわけだが、僕らの場合は土曜日も授業があるので二連休だ。

 昨日は太陽があがってくるまでパソコンで遊んで、今日は五時に起床。五時といっても午後のほうである。時報である「ゆうやけこやけ」は、僕にとっては目覚まし代わりだ。

 とりあえずパソコンの電源を入れる。西日にしびはいりが良すぎるこの部屋では、とにかくは熱を持ちやすい。


 「おぜうさま、ご機嫌はいかがでござんしょ」


 などとふざけながら、塗料が溶けそうなくらいに熱された電源ボタンを押す。予想通り、起動はかなり遅かった。



 ちょっとした更新データの適用もあり、起動には四分を要した。さて、とりあえずゲームだ。


 もう二年くらいハマっている海戦ゲームを起動する。二年もハマっている理由は、相手が生身の人間だから。だと思う。それだけでゲームの面白さは五倍くらいに感じられるものなのだ。


 実は以前、クラス内で自己紹介的なことをやったときにこのゲームを紹介した。そして、興味を持って始めてくれたのが三人。三人ともやめず、今ではすっかりハマっている。

 そんな事を考えているうちに、ロードは完了した。


 「お、もうみんなはいってるな」


 同じグループの仲間になった三人のうち、現在二人がログイン中である旨の表示がある。二人はチームを組んで、今日も既に数戦こなしたようだ。よし、僕も参加しよう。

 チャットで参加したいと送信する。すぐさま返事がきて、二人が組んでいたチームに参加した。準備完了。

 サーバーがマッチングをおこなう。15vs15で戦うこのゲームでは、戦力差のないチーム分けをするのに三分以上の時間がかかる。とにかくこの時間は憂鬱、というか暇だ。


 そして戦闘が始まる。僕が使うのは航空母艦「瑞鶴ずいかく」だ。

 一方的に戦艦を沈められる空母の役割は大きいが、それゆえに操作は難しい。


 「ガッ!」


 ちょっと油断したすきに、爆撃隊が全部やられた。思わず声が漏れてしまう。急いで再攻撃を準備しなければ。

 その間にも、別の爆撃隊が敵艦へと接近していた。

 コンマ五秒先の、敵艦の未来位置を予測する。これは心理戦だ。相手がどちらにけるのか、爆撃機が進入する瞬間に決めなくてはならない。

 熟練の技が生きる。僕は、絶対の自信を持って投下位置を定め、左クリックを押した。と――


 「うぅぅみぃいいぃゆううぅぅかぁあばぁぁああぁああ」


 突如として「海行かば」が流れた。なんだ、パソコンが壊れたか?なんだなんだ?

 あ、思い出した。これ、着信音だ。前に着メロを設定したのを忘れていた。

 急いで携帯電話を探す。普段は電話をかけてくる人なんていないから、きっと何か一大事に違いない。ゲームはもうやめだ。

 黒光りする携帯電話を手に取り、急いで開く。そこに表示された名前に驚きつつ、僕は電話にでた。


 「もしもし」

 「お、出てくれたか。よかった」


 掛けてきたのは、英語科の高倉である。部活関係で必要だとの事で電話番号は教えてあったが、まさか掛かってくることがあるとは。用件はなんだ?


 「実はね、今年からうちの学園で、優秀な人を何人か選んで英語でスピーチをやってもらうってのを始める事にしたんだけど。やってくれんか」


 なんてこった。折角せっかくの休日にどんな話だよ。



 彼の話によると、スピーチは九月。内容は自由。

 大方おおかた、前に授業で書いた英文が評価されたりしたのだろう。山口中将について書いただ。まあ、あんなのをそのまま発表させてくれるわけではなかろうが。

 少し考えたが、ひとまず吞んでおく。


 「わかりました」


 実際、学園の人々に羨望の目で見られることは悪くないと思うし。普段はあまり人と話さない僕だが、いや、だからこそ、こういう機会に自分のことを見てもらいたいという単純な気持ちがあったりする。

 それにまあ、どちらかというと結局は、女の子にモテたいという心理があった。

 電話を切る。あー。なんか、起きたばかりなはずなのに、また疲労が出てきた。

 またベッドに横たわり、軽く部屋を見回す。

 ん?何かチカチカしてる。なんだ?



 あ。やべ。


 急いでパソコンに駆け寄った。途中で放棄していたゲームのチャット欄には、マッチングで仲間になった人々からの “AFK” つまり「途中退室野郎」という意味のコメントが大量に載せられていた。そして生き残っているのは僕の空母だけ。空母一隻ではもう挽回できない。時既に遅し。


 あちゃあ……



 やっちまったあ…………

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自称右翼のほのぼの学園生活記 リヨウ @DD51-856

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