ヤンキー女子と狼オネエ
伊月朱李
第1話
「お、おい!お前は
「あんた誰」
「お願いだ!俺を助け……」
私はアイスを持ちながらそいつを見ていた。
「なんであんたを助けないといけない?思い出したけど、あんた後輩をいたぶってくれたな?」
私は笑顔でその場を立ち去った。
ああいう奴は一度痛い目を見た方がいい。アイスを食べながら歩いていると、田中のおばさんが走って来た。
「雷華ちゃん!風華さんが!!」
その言葉を聞いた私はアイスを落としてダッシュで病院へ走った。あんな風に言うのであれば非常事態だろう。風華とは私の母親の事である。母さんは先月すい臓がんで早期発見なため大事には至らないらしい。でも、いつ悪い状態になるか分からない。
「母さん!!」
大きな声で扉を思いっきり空けると、母さんは驚いたような顔で編み物をしていた。
「あら、雷華。どうしたの?」
「え、体は?大丈夫なの??」
「大丈夫よ!ほら、元気元気!今日で治療は終わったから明日から退院してい言って言われちゃったのよ!!」
私は安心して床に座り込んでしまった。すると、母さんはクスッと笑った。
「田中さんの話をしっかり聞かなかったんでしょ?まったく、忙しい子ね」
「う、うるさいなー」
座っていた腰を上げて、私は椅子に座った。
「あ、そう言えば雷華。来週から東京で暮らすことになったから準備しておいてね」
「分かった!じゃ、私はこれで帰るね!」
そして私が母さんと話したのは最後だった。
―――
翌日、母さんは息を引き取っていた。眠るような顔だった。病院についた時、医者は山場を伝えるなと言ったらしい。
「雷華」
その声を聞いた私は下に向けていた顔を上にあげた。
「父、さん。なんでここに……」
「そりゃあ風華の夫でお前の父親だからな」
そう言うと父さんは私の頭を撫でて抱きしめてくれた。出てこなかった涙がその時ボロボロと出て来た。
葬式を終え、私は父さんの所へ引っ越しをした。
それにしても父さんって金持ちだったんだなぁと思った。何故なら、父さんの家は高級住宅街の一番でかい一軒家だからだ。
「この部屋を使いなさい。何かあったらきちんと言いなさい」
「う、うん」
私は父さんが真面目な顔なんて久々に見た。いつもちゃらんぽらんな性格なのに。でもやっぱり父さんの顔はやつれている。自分が仕事で海外へと飛んでいる時に母さんの病気が発覚しそして死んでしまったのだからそれも仕方がない。
「父さん。今日のご飯何食べるの?私が作ってあげるから教えて」
「ん?お前、料理なんてできるのか!?」
「まあね。母さん、料理できなかったし。まあ、ある程度の料理だったらできるから」
「すごいな!じゃあ、久々に和食を食べたいかな」
「分かった」
私は部屋に行き、荷解きをした。母さんの形見もある。まあ、荷物も少ないからすぐに終わった。
「さてと、父さん。買い物行ってくるね」
「ああ、行ってらっしゃい!」
私は駅前スーパーに行った。
買い物が終わり、帰っていると人が大きな声で叫んでいた。
「ドロボー!!」
その盗人は私の横を走り去った。そしてすぐに追いついてきた人に私の荷物を預けて盗人を追いかけた。盗人は鞄を慌てたのか落としてそのままどこかへ行った。私は転がっていた鞄を広い、さっきの場所に戻った。
「あ、いた。あの、鞄」
「あ!あなた、さっきの!!ありがとう!あの鞄の中にはとても大切な物が入っていたの!!」
そう言うと、顔を上げた。その瞬間私は驚いてしまった。その人は……男だったのだ。
ヤンキー女子と狼オネエ 伊月朱李 @tomokakichi
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