第7話 二度目の遊園地②


「学生二枚で」


「合計で7800円です」


「はい」


「ちょうどお預かりします」


 チケットを受け取り、一枚はポケットの中にしまった。


「7800円か。相変わらず高いな」


「相変わらずって、来たことあるんですか?」


「あれ。別の遊園地と間違えたかな」


 この遊園地には来たことがない。でも確かに僕は今、「相変わらず」と言った。  妙な違和感が全身を走る。思い出そうとしても思い出せない。


 考えてみると僕は外に出かけることがあまりなかった。休日は家でだらだらと過ごし、夏休みなども特別楽しみなことはなかった。


 そういえば、去年の春休みは……


「ねえ!」


 急に彼女が大きな声を出した。


「ど、どうしたの」


「どうしたのじゃないよ。何度も話しかけてるのにぼーっとしてて全然気づかないんだもん」


 訂正。彼女は急に声を出したのではなく、何度も話しかけていたらしい。


「早く中入ろうよ」


「そうだな。ごめん」


「べつに謝ることないよ」


 彼女は、「行こ」と言って無邪気に笑う。

 こんな顔を見ると彼女が幽霊だということを忘れてしまいそうになる。


 入口でチケットを渡し、半券はポケットに入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君と二度目の初恋 天川 夕 @LuNali0n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ