第6話 二度目の遊園地①


「並んでますねー」


「まあ春休みだからな」



 僕たちは今、遊園地に来ている。


 彼女が言うには成仏は生前やり残したことをやればできるらしい。幽霊がそう言うのだから信じようとは思うのだが。


「遊園地に来るのは初めてか?」


「いえ、二回目です」


 この通り。遊園地に行ったことがない、というなら話はわかるが、一回行ったことがあるというのに一体何をやり残したのだろう。


「とりあえず並びましょうか」


「そうだな」


 この行列の先には入園するのに必要なチケットの販売窓口がある。


「君って生きてたらいくつだったの?」


「君と同い年ですよ」


 春色の風が彼女の髪を揺らす。微笑んだ表情はどこか安心感があった。

 何か惹かれ、一瞬、反応が遅れた。


「あれ。なんで僕の歳……」


「あー、仲良くなかっただけで一応同級生ですからね」


「そういうことか」


 イマイチ納得できなかったが、自分でもどこがわからないのかわからずその場は流すことにした。

 今は入園料のことを考えなくてはならない。


「じゃあ君も僕と同じ料金でいいんだね」


「え、でも私幽霊だから入園料かかりませんよ」


「それはだめだ。いくら見えなくてもお金はきっちり払う」


「……そうですか」


 彼女が一瞬、微笑んだ気がした。


「どうした、何か嬉しかったか?」


「いえ、変わらないなと思って」


 僕にはその意味が理解できず、首を傾げると、彼女は慌てて付け足す。


「小三の時、学級委員やってましたよね! その時にしっかりしてるなーと思いまして」


 小学生の学級委員なんかで人の真面目さが図れるものだろうか。


「小三の時は同じクラスだったのか?」


「そうですね」


 どうやら彼女は自分のことを聞かれるのが好きではないらしい。それは生前も同じだったのか、そんなこと僕にはわからないが、あまり聞かない方がいいだろう。


 実は僕も自分のことを聞かれるのが好きな方ではない。いや、苦手だ。僕は僕でいたいのにその中を覗かれるのはなんとなくこわい。


 しかしきっと彼女は違うのだろう。幽霊にもいろいろあるのだと思う。僕には言えない、隠したいこと。


 だから僕はこれ以上聞かないのだと思う。

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