音色の影

作者 空知音

30

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★★★ Excellent!!!

 「記憶」にちなんだ小説ということで、個人的な記憶からレビューを書き起こさせていただきます。それは、ある映画の冒頭で提示される、次の文章にまつわるものです。
「物語の舞台は、何らかの危機的な災害が起き、水・食糧不足に陥ったヨーロッパである。しかしこの物語において、どんな災害が起きたのかは語られることはない。描かれるのは、この世界における人々の姿であり、それ以外は重要ではないのだ」
 このような言葉に、自分が大きくゆさぶられた経験を、書きながら思い起こしています。
 「危機的な災害」において「人々の姿」が「描かれる」のは当然のこととしても、なぜ、「それ以外は重要ではない」のでしょうか? 私見では、「どんな災害が起きたのか」が「描かれる」だけでは、災害における「人々の姿」を捉えることはできないからです。事象にまつわる論理的・構造的分析は、事象の渦中にある「人々」に対して、むしろ根底的に無力なのではないか?

 この小説を読んでいく際は、「どんなことが起きているのか」に気を取られすぎるべきではないと思います。「それ以外は重要ではない」とまでは言いませんが、重要なものは他にもあります。それはおそらく、「人々の姿」ならぬ「細部の姿」ではないでしょうか? つまり、置かれた描写そのものに気を配ること。置石としてのそれらにいちいち躓くこと。
「旧街道は、ほとんど整備の手が入らないため、土の道には、轍が深く刻まれ、そこに先日降った雨が溜まっていた。」(第十八話 追跡者)
「雨に濡れた草は重く、急ぐ足を滞らせた。」(第十九話 荒れ地の邂逅)
 轍の雨水。濡れた草の重さ。おそらく作中でどのような有機的な役割も与えられていない静物たちが、主人公あるいは物語の行く手を、むしろ絶えず照らしているかのようです。
 ひとつずつの物言わぬ石が、物語にある大きな事々(主人公の寡黙な心理、陰鬱な冒険譚、復讐劇… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

記憶を失くした主人公ヒエラスの正体は何者か、とても気になる作品です。
ポップで軽いファンタジー作品とは違い、落ち着いて読みたい、その世界観にじっくり浸かりたいと思わせてくれる良作!(あ、この作者様はポップなのも書かれておりますよ~!)
闘技場で戦いながら自らの明日と生を切り開いていくヒエラス。
彼が踏み出し辿り着く先を見たいです。
どんな秘密があり彼が何を思うのか、最後まで見届けたいと思います。
ちょっと高飛車なケイトリンお嬢様も出てきており、可愛いです。(笑)
皆さま是非にご一読を!