第8話

とんでもない衝撃が走った。

電車は急ブレーキをかけた、そのせいで電車の中の人たちは、将棋倒しのようになった。


僕の体も進行方向に投げ出されそうになったが、伊丹がとんでもない力で肩を掴んで支えたので、かろうじて立っていられた。


肩に感じるあまりの力から、本能で理解した。


僕は逃げられない、この人から。


やるしかないないんだ。


僕はポケットから爆弾を取り出した。


伊丹はそれを見て嬉しそうに聞いた。


「おお!?それは?なにか…


























「ハッ!?」


ミーの体は?なんだ?なにが起きた?


伊丹は誰もいない車両の真ん中で大の字で寝ていた。なにも思い出せない。自分が何故ここにいたのかわからなかった。


自分の顔が首の上にあることを手で触って確かめる。上半身が吹っ飛んだ感覚がある。いや、そんな気がするだけかもしれない。


とにかく記憶が混濁している。何があったか分からない。


顔には鈍い痛みがある。おもいっきり平手打ちされた程度の痛みで、大した傷はない。


片手で頭を覆いながら、今の状況を整理していると、ものすごいスピードで列車の外に弾き飛ばされた。


ドゴッという鈍い音とともに伊丹の体は線路脇のブロックに叩きつけられた。


「っつぅ…痛てて、なんだぁ?」


弾き出された電車の屋根に人が2人、1人は顔見知り、嫌いなやつだ。もう1人は知らない男だ。


いや、知ってるかも。彼の姿をよく見ると心当たりがあった。


「伊丹、久しぶりだな」


知ってる奴が話す。


「軍人さん、また来たの?嫌いなんだよね。あんた」


「何度でも来るさ、お前を殺すまではな」


そういうと、軍人と呼ばれた男はアサルトライフルを構えた。


「軍人さんには興味ないけど、隣の人は面白そうだね。」


伊丹は銃を無視して隣の男に話しかける。


「初めまして、ジャック・スパロウです。」


隣の男は、少しイラついた表情をしたが、伊丹はそれを見て満足そうに続けた。


「その格好、いいね。武器も強そうだし、さっきの攻撃、君だよね。なかなかの一撃だったよ。」


「能力は…その姿の見たままなのかな?」


隣の男はなにも言わずに大きな剣を構えた。

剣は炎に包まれて、刃が真っ赤に光った。


その剣を見て伊丹がニヤリと笑う。


「炎の…社会人一年目君、かな?」









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能のない虎 @tairou

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