第7話

「どういう意味ですか?」


おかしなヤツに絡まれた。なんか変なことを聞かれた。怖い。どどどどーしよう。


状況を整理するために、頭はフル回転しているが、体はフリーズしている。嫌な汗をじわじわと額に感じる。


そんな僕を覗く彼は、嬉しそうにニコニコしてる。


「あれ、言いたくない?でも、君はなんか持ってるんでしょ?」


『持ってる』

その言葉で、瓜生の頭に『保険』のことが頭をよぎった。ポケットに入っている、たった一つの『保険の爆弾』のこと…


瓜生は初めてしっかりと伊丹の顔を見た。


そして『爆弾』にゆっくり手を伸ばしながら、シラを切った。


「えっと…なんのことだかわかりません…けど…」


それを聞いて伊丹の笑みは、少し悪い笑みに変わった。


「いや、君は絶対持ってる。持ってるはずなんだよ。それをちょっと僕に見せてもらいたいだけなんだ。」


こんな時にどうでも良いのだが、どこかで聞いたことのあるセリフだった。窓ガラスを破って逃げ出したい…


伊丹の声は最初は囁き声だったが、徐々に大きくなっている。


「あー、良いんだよ!少しだけで!本当に少しだけで!!」


彼の声に周りの注目が集まる、ただ、彼と目を合わせようとする人はいない。


「しっ、知りません。僕は何も持ってないんです!」


それを聞いて、さらに悪い顔になった伊丹の体から湯気のような煙のようなものが少しだけ出てきているように見えた。

バチバチと静電気のような音もうっすら聞こえる。


「えっとね、瓜生君」


伊丹の体から熱を感じる。ストーブの近くにいるようだ。伊丹は体を少し丸め、顔は足元を向いている。


「ミーは…ミーはね…」


ウズウズと体を揺らしていた伊丹が勢いよく顔を上げた。


「無理やりっていうのも結構好きだよ!!」


伊丹の体から凄い勢いで白い気体が立ち上っている。すごく熱い、息苦しい、瓜生は今すぐ逃げ出したかったが、伊丹から感じる圧力で、まるで金縛りにあったように体が言うことを聞かない。


「ほんっとうに見せてくれないのかいっ?べつに悪いようにはしないからさぁあ?」


瓜生は、ポケットの爆弾をギュッと握りながら、震えて首を横に振るのが精一杯だった。


「はぁ…君が自分から見せなてくれないって言うなら仕方ないね…」


伊丹が左の手のひらを自身の胸に当てた。


「こういう時はね『身の危険』を感じさせるのが1番早いんだよ…」


「ねッッッッ!!」


伊丹は耳を突き破るような大声を発しながら手を大きく弧を描くように払った。


次の瞬間、轟音がして、ものすごい突風に吹かれたような感覚がすると同時に、目に見える範囲の電車の窓ガラスが全て粉々に吹き飛んだ。


乗客から悲鳴が上がり車内が騒然となる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

能のない虎 @tairou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る