第3話

「ああ……」


それを聞いた村下さんは情けない声をあげて天を仰ぐと、すうっとその姿を消した。


男が私を見た。


「これであの人も成仏することが出来ました」


私は男をじっくりと見て言った。


「あなたは誰ですか?」


「ああ私ですか。名乗るほど者ではありませんよ」


「どうしてここへ?」


「それはですねえ、私はある日を境に突然、死んだことに気付かずさまよっている魂がどこにいるか、わかるようになったんですよ。そこで今はそう言った魂を説得して、あの世に送り届けることを生きがいとしているんです。私が説得すると、理由は自分でもよくはわからないんですけど、さまよう魂が素直にあの世に行ってくれるんですね」


「……生きがいですか」


「そう、私の生きがいです」


生きている人間もそうだが、どうやら死んでからも、人のことはよくわかっても自分のことはわかっていないようだ。


なぜならこの男も身体が透けていて、後ろの景色が見えていたのだから。



       終

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気がつかない ツヨシ @kunkunkonkon

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