コップの中の漣(龍野とヴァイスVer)

有原ハリアー

体離れれど心離れず

 ヴァイスがヴァレンティアに帰ってから一か月。俺はまた会えないかと、毎日心をざわつかせていた。

「ああクソッ、落ち着かねえ! そうだ、水でも飲むか……」

 コップに水を注いで、俺はテーブル脇の椅子に座る。


 だが、俺の幸せな時間は一本の電話によって遮られた。


「何なんだよ、もう……!」

 やかましく騒ぎ立てる電話を止めるべく、俺は受話器のある場所まで走って行った。


     *


 元気にしてるかしら、龍野君。

 今はヴァレンティア城にいるけれど、私の心は龍野君のそばにあった。おかげで、目の前の食事も満足に食べられていない。

「今日は残そうかしらね……」

 私はコップに入った水を飲むと、ふうとため息をついた。

「うふふ。龍野君、元気にしているかしら?」

 コップをそっと置くと、水がゆらゆらと揺れていた。


     *


「全くもう、押し売りの電話は掛けてくるなよ……!」

 ろくでもない電話だった。俺はやり場のない怒りを発散しようと、水に手を伸ばし――ん?


 何で風も無いのに、揺れてるんだ?


 中身は減っていない。

 けれど、誰もいないし、風も吹いていない。なのに、

「まさか……お化けじゃ、ないよな。それよりも……あいつ、今頃は元気にしてるかなぁ」

 俺はコップの中の漣が止まるまで、見守ることにした。

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コップの中の漣(龍野とヴァイスVer) 有原ハリアー @BlackKnight

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