2-8
夜8時になって、玄関が開く音がした。
「ただいま...おぉっいい匂いだな!」
「おかえり、ちゃんと肉じゃが作ったよ。七味混ぜてないから安心して。」
男性陣は席につき、私は白ご飯と肉じゃがを用意する。
「撮影おつかれ。どうだった?」
「初っ端から走りまくった...。」
と疲れた様子の翔也に若葉は思わず笑う。
「でも翔也くんの演技素晴らしかったよ〜!走った後に悲壮な顔で振り向くところとか完璧だった。」
「やーもう...何度か研究して大丈夫かなーって思ってたんですけど。」
「でも監督が完璧だったって言ってるよ。放送楽しみにしてるね。」
と二人で笑い合う。それを見て父は
「こうして見ると、娘と息子がいるみたいだな。」
と言う。
それを聞いて翔也は少し盛大に笑いながら言った。
「誕生日的に俺の方が兄貴だな。」
翔也は五月生まれで若葉は六月生まれ。
「そういえば翔也って兄弟いるの?」
「いるよ、弟。僚太って言うんだ。」
「へぇー、何歳?」
「小六だから12歳。」
そう言いながらポケットから携帯を取り出し、写真を見せてくれた。
どこか芋っぽい印象があるが、もう少しすれば翔也と同じような美少年になるだろうといった顔つきだ。
翔也に兄弟がいるなんて知らなかった。
既に三ヶ月も一緒に暮らしていたのに、まだまだ分からないことだらけだ。
俳優の高坂翔也はファンに向けてありったけの長所を見せつけて魅了していく。
新しい面を見つければファンは大喜びする。
でも若葉は一人の人間として高坂翔也の事をまた新しく知っていく。
いい所だけではなく欠点も、カメラに映されていない時の気の抜けた表情も、家族構成も、まだまだこれからも知っていく。
おつかれさまな話 藤宮藤子 @Fujinana_2727
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