2-7

そんな日々を過ごしているうちに、翔也が撮影入りすることになった。


「今日から頑張ってくるわ。」

「頑張れ、翔也もお父さんも。夜ご飯は肉じゃがにしておくから!」

「作れるのかよ。」

「作れるわ!翔也のだけ七味混ぜんで!?」


ふと大阪弁が出てしまって、若葉は口を抑えた。


翔也はそれを見て笑うと、若葉の父親で翔也が出演するドラマの監督である武井と共に家を出ていった。





「...お母さん....。」


若葉はぼそりと呟く。


若葉は大阪で生まれ、幼稚園を卒園するまでそこにいた。

父はその頃はドラマのスタッフで、大阪からいつも現場に向かっていたのだがそれが大変なので父は母に東京に移住することを提案した。


しかし、母は東京なんて死んでも住みたくないと反論した。

しかし当時幼かった若葉は東京が魅力的に思えて、「東京ええやん」と言ったのだ。


その時、母に睨まれ「ならあんたら2人で東京に住めばいい。」と怒鳴られた。


父も頑固者なので、一度東京に暮らすと決めたら変えたくない人だった。

頑固者二人の押し相撲に挟まれた若葉は、ただ流されるがままある日父に手を引かれ東京に連れてこられた。


母は今も大阪で暮らしており、年三回若葉が夏休み、冬休み、春休みに入った時のみ若葉が大阪に行くか母が東京に来るかして会っている。


しかし母は家族三人大阪でいつまでも暮らすことを夢見ていたので、一度でも母の意見ではなく父の意見に同意した私が許せないらしいので会う時以外は連絡しても返事をしてはくれない。


翔也には、家に帰れば待っていてくれていつでも連絡すれば返事をしてくれるお母さんがいるし、芸能活動に協力的なお父さんもいる。


「やだなぁ....。」


比べてしまう自分がとてつもなく嫌になった。

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