第七話 迷っても進むしかない

 間違えると、咎められる。

 俺が間違えた行動をすると、即座に拳か蹴りが飛んでくる。間違いが酷い場合は、その威力が上がっていく。俺が間違えた行動を取らなければ、その拳や蹴りは充分受け止められる範囲に収めてくれる。

 だが、正しい行動ばかりをしていると、時折、よくわからない打撃を食らわされて、いつの間にか地面に転がっていることになる。なんだろうな、あれは。見えている打撃の癖に、まったく体が動かなくて、為す術もなく倒される奴。


「ま、だ……まだぁ!」


 倒されて、口の中が切れて、血をだらだら口の端から流している俺であるが、この程度では動じなくなってきた。大丈夫だ、まだ体が動くのならば、上等。

 そうだ、体が動くのならば、続けよう。

 俺は疲労困憊の肉体を無理やり動かして、何度も師匠へ立ち向かっていく。


「…………ほう?」

「ご、がぁ!?」


 不屈の覚悟で立ち上がる俺を、師匠は半笑いであっさりといなした。

 俺の拳はすり抜けるように最小限の動きで避けられて、カウンター気味に決められた拳が鳩尾に突き刺さる。それでも、痛みと呻きを我慢して追撃しようとしたのだが、密着状態から、鳩尾に当てられた拳から衝撃が再度ぶち込まれる。

 痛いってレベルじゃなねぇよ、これ。

 気づけば地面に体を丸くして、呻いていたもん。


「今日は随分と気合い入っているじゃねーか、弟子。まるで、死にぞこないの兵士みたいな顔祖しているぜ?」

「…………別に、何でもありません――よっ!」

「あめぇよ、ぬりぃよ、馬鹿が」


 俺は会話を交わしながら、師匠の隙を伺って起き上がり様に、カポエイラの要領で蹴りをぶちかましたのだが、当然、軽く受け止められて、そのままジャイアントスイング。

 明らかに着地の安全性を考慮されない放り投げによって、俺は木の幹に背中から衝突。あまりの衝撃に、肺から全て息が叩き出されたような錯覚を得た。


「気合いで戦いに勝てれば世話ねぇよ。もちろん、気合いを入れるなってわけじゃねぇ。修業を逃げ道にするなって言ってんだよ」

「…………うぅ」

「ふん。まぁ、予想は付く…………弟子よぉ、テメェ女に振られただろ?」

「ごぶはっ!?」


 殴られた時の数倍以上の衝撃が、俺の精神を揺さぶる。

 何故だ、何故分かったんだ、師匠!? 


「何故分かった? みたいな顔をするんじゃねーよ、馬鹿が。つい先日まで無駄に活き活きしていたお前が、今じゃ、死に場所を求める『くたばりぞこない』の如くだ。そりゃあ、こいつは振られたと勘付くだろうと、誰でもな」

「…………ふ、ふふふ、そんなに分かり易かったですか? これでも、当人には最後まで隠し通せたと思うんですが」

「んなもん、その女が底抜けの鈍感だっただけだろうが」

「……あぁ」

「それか、ものすげえ悪女」

「や、それは無いです」


 俺がきっぱりと否定したのを見ると、師匠はくくくと喉を震わせて俺を笑う。


「なるほどな、こりゃ、救いようがない。テメェ、振られた癖にまだその女の事が好きでたまらねぇって顔しているぜ?」

「は、ははは、やっぱりですか? 師匠、こんな情けない俺にどうかお導きを」

「いよぉし、風俗行け」

「嫌です。俺の初体験はもっとこう、エロゲーのHシーンみたいに青春に満ち溢れた物でありたい」

「ああん? 俺の青春時代はもっぱら商売女を抱いていたぞ? 何せ、こちらが入れ込まなければ後腐れが無い」

「血と硝煙でむせるような青春時代と一緒にしないでください」


 俺の師匠、エイトさんは冗談みたいに性質の悪いハードボイルドなジャンルを生きて来た人だ。俺のように呑気に日常四コマみたいな世界を生きて来た奴とは年季が違う。まぁ、最近は俺の世界も異能バトルに染められてきているのだが、それはさておき、だ。


「……それで、師匠。女に振られたぐらいで凹んでいる童貞野郎は、しばらく頭を冷やせ。修業はそれまでお預けだ、という流れですか?」

「はぁん? 馬鹿か、テメェは。つーか、何時まで寝てんだ、さっさと起きろ」

「うぉおおおお!? このクソ師匠! あっさり臓腑を踏み潰そうとするんじゃねぇ!」


 くははは、と笑いながら悪びれも無く師匠は立ち上がろうとする俺の尻を蹴飛ばす。

 まったく、この人は言葉の代わりに暴力を振るう上に、それが致死性を帯びている物もあるわで、とことん人間的に破綻しているよな。

 最近、俺の成長を見ながら感慨深く『俺には教育者としての才能があったかもしれん』と呟いている所を見たが、それは絶対に間違いだと断言できる。


「男の色恋沙汰なんざ、俺にとってはゴミクズ以下だ。記憶に留めるどころか、耳に入れる価値すらねぇ。だがよ? おい、テメェの弟子が女に振られて愉快に落ち込んでいるってんなら、話は別だ」

「……ええと?」

「察しが悪いな、弟子。だから振られんだよ」

「正確には振られる前に、相手に彼氏が居て、物凄い幸せオーラを出していることを知って心が砕けただけですぅ!」

「うわ、だっせぇ」

「うるせぇ!」


 俺は八つ当たり染みた拳を軽々と師匠は受け止め、言葉と共に暴力を返して来た。


「――――だから、師匠として弟子の八つ当たりに付き合ってやんよ。テメェみたいなガキが当たり散らしたら、あっという間に死人が大量生産だからな」

「ありがとう! そして、俺はどんな怪物だよ、クソ師匠!」

「お前はお前が思うよりも、ずっと怪物だぜ、クソ弟子」


 俺と師匠は、互いに口からクソの如き罵声を吐き捨てながら殴り合う。

 最低だ。最低で最悪の暴力的コミュニケーションだ。

 きっと、蛮族だってもうちょっとまともなコミュニケーションを取る。少なくとも、失恋後の高校生にはまるで似合わない代物だろう。

 けれど、やっぱり俺もこの人の弟子になって染められてきた部分もあるんだな。


「ははははは! どうした、どうしたぁ!? いつもより数段弱いぞ、クソ弟子ぃ!」

「うるせえ! ここから超覚醒して、今すぐぶち殺してやるよ、クソ師匠ぉ!」

「やってみろよ、ああん!?」

「うわやめっ――何その間合い外へ打撃を飛ばす技術!?」

「くははは! 異能と呼ばなかっただけ、成長したなぁ、おい!」


 馬鹿みたいに殴り合えている間は、どうやら俺は『失恋した男子高校生』ではなくて、ただの『馬鹿な男子高校生』になれているみたいだから。



●●●



「美味い飯を食わせてやる」


 いつもは修業が終わった後は、謎の黒塗りのリムジンによって自宅に送られる俺であったが、今日は珍しくパターンが違うようだ。

 何の思い付きをしたのか、師匠が俺に飯を奢ってくれるらしい。既に自宅の母親にも連絡を済ませたらしく、今日の俺の夕飯は否が応でも師匠と一緒だ。これがせめて、中年の強面のオッサンじゃなくて美人のお姉さんだったらなぁ。


「おう、弟子。テメェ、奢られる立場で失礼なこと考えただろ?」

「はははは、いえいえ、滅相も御座いません。んで、焼き肉でも食べに行くので?」

「馬鹿言え。もっと良い肉を食わせてやる」

「ほほう」


 肉。肉かぁ。

 やけに振動が少ないリムジンの座席に座りながら、密かに俺は心が湧き立った。

 結局のところ、一般的な男子高校生は肉が大好きなのだ。グレードが低くても、肉の割合が多めな野菜炒めが出ただけでもテンションが上がる。バーベキューは肉ばっかり焼く。

 そんな一般的な男子高校生の一人である俺が、年上で、しかも結構金を持っていそうな大人である師匠に『良い肉を食わせてやる』と言われれば、期待せずにはいられない。

 さぁて、一体どんな高級レストランか、ステーキハウスに連れて行ってくれるのかな?


「…………ん? あれ、師匠?」

「お、気付いたか。だが、安心しろ。ここは見た目こそ普通の喫茶店で、おまけに平日は営業していないという接客業を舐め腐っている店長が経営しているが、料理の腕だけは上等でな?」

「…………あー、知っています、ここ」

「なに?」

「つーか、バイトしていますわ、俺」


 リムジンが着いた場所は、店内に薄明かりの照明が点けられている『喫茶・黒鉄亭』だ。

 そう、俺のバイト先だったのである。


「マジか。つーことは、あいつがバイトを雇ったのか? この店で? おいおい、将来有望だと思っていたが、まさかここまでとはな」

「師匠、マスターと知り合いで?」

「おうよ。何度も戦場で共に戦った戦友だ」

「おお!」

「まー、その倍ぐらいはお互いの命を奪おうとした宿敵同士でもあるがな」

「おおう!?」


 げらげらと、頬の傷痕を歪めて笑う師匠。

 いやいや、笑いごとじゃありませんよ、師匠。正直、マスターと師匠が、万が一にでもかち合うことになれば、無力な俺は逃げることしかできない。是非とも、過去の遺恨は水に流して、平和的に過ごしてもらいたいものだ。


「おう、ハゲ。俺だぞ、俺が来てやったぞ、おら、さっさと開けろ」

「おやめください、お客様ぁ! ノックは足じゃなくて手でぇ!」


 なお、俺の心配をよそに、師匠はいつも通りのノリで喫茶店のドアに蹴りをかましている。

 いつもながら、この人のノリは性質の悪いチンピラなんだよな。平時であれば、絶対に関わりたくないタイプの人間である。


「うるさいぞ、人間の屑が…………っと、ん? 鈴木少年?」

「あ、どうも。こんばんはですね、マスター」


 案の定、ドアの向こう側から不機嫌そうな声のマスターが出てくるが、なんとか俺が師匠よりも先に対応して、少しでも理性を保ってもらう。


「ええと、夜分遅くにすみません、俺の師匠が」

「……師匠? 君の師匠が、この屑なのか」

「おう、誰が屑だよ、ハゲ。人間の屑はお互い様だろうが、ああん?」

「黙れ、ハゲではなくスキンヘッドだ。後、貴様ほど俺は屑では無い。貴様が底辺だ」

「おおん?」

「あ?」


 師匠とマスターが驚くほどスムーズな流れで睨み合っている。

 やめてくれよ……殺気のぶつかり合いの余波で、通りすがりのサラリーマンが泡を吹いて倒れたじゃないか。一般人への迷惑をお考え下さい。


「まぁ、まぁまぁ師匠に、マスター。ここは俺の顔に免じて、どうか一つ」


 俺は消滅覚悟で二人の間に割って入り、何とか二人の怒りを宥めた。

 師匠もマスターも、俺が世話になっている大人なので、出来れば喧嘩して欲しくない。それ以上に、俺の身の安全が脅かされるので直ちにやめて欲しい。


「ふん、弟子が言うんじゃ仕方ねぇ。命拾いしたな、ハゲ」

「それは貴様だ、屑…………それより、本当だったんだな。貴様が弟子を取ったという話は。電話で聞いた時は、貴様の正気を疑ったぞ?」

「くははは、だろうな。だが、現実はこれだ。どうだ? 驚いただろ?」


 師匠が馴れ馴れしく俺の背中を叩き、にやにやとマスターに笑みを向ける。

 まるで、新しい玩具を手に入れた子供のような顔で。


「確かに、な。だが同時に納得もした。そうか、貴様の埒外な指導にも耐えられるのならば、機関の高ランクエージェントも打倒できるか」

「お、なんだ、弟子。いつの間にか初戦場を経験してたのかよ、言えよ、お前さあ」

「報告していたら、絶対に『調子に乗るな』っていつもより厳しい修業になりますよね?」

「当然だ。勝った時こそ厳しく指導するのが、この俺よ。はっはっは!」


 やっぱり報告しなくて正解じゃないか。

 つーか、何をそんなに嬉しそうに笑っているんだか、師匠は。


「よし、弟子の初勝利祝いだ。飛び切りの肉を食わせてやれ、黒鉄」

「ふん。貴様に言われずとも、そうするさ、エイト」


 先ほどまでの険悪な雰囲気が嘘のように、師匠とマスターは苦笑を交わして店内へと入っていく。

 ううん、よくわからないな、この二人の関係は。

 険悪で、貶し合う癖に、その根底にあるのは妙な信頼感だ。

 俺と佐藤も日常的に貶し合うのだが、この二人はそれを数段悪化させたような悪友同士なのかもしれない。


「待たせたな、鈴木少年。いつも世話になっている礼と、この屑に付き合わされている労いも兼ねて、とっておきの肉を焼いた。好きに食うといい」

「お、おおー」


 でもまぁ、そんなことは目の前に置かれたでっかいステーキに比べれば些事だと思う。

 肉だ、肉だ。それも、鉄板プレートの上にどかっ、と置かれたどでかい肉だ。牛肉の良い所を焼いて、どぉんと置かれた肉だ。じゅうじゅう、とまだ熱を持つ鉄板が肉を焼き続け、香辛料と混ざった肉の香りが俺の胃を刺激して来る。

 ううむ、流石だ、そこんじょそこらのステーキハウスとは迫力が違うぜ。


「い、いたたきまぁす!」


 俺はたまらず、ナイフとフォークを装備してステーキに挑みかかった。

 そのどでかい肉の塊は、大きさに反してすんなりとナイフが通る。する、する、と抵抗なく、けれど、切り分けた肉を口内で噛みしめれば――――しっかりとした肉の弾力があるのだから、不思議としか言いようがない。


「ん、んんんー!」


 肉の旨み。

 油の旨み。

 香辛料の香ばしさ。

 この三つが崩れれば、ステーキという食べ物はただの肉塊へと堕してしまう。もちろん、肉の焼き加減も肝心だ。

 このステーキは肉の中の方が赤身の残ったミディアムレア。

 しかし、当然、赤身の部分でも冷たくない。きっちりと熱が通され、肉の旨みが活性化されてなお、レア。

 か、完璧だ。

 まさしく完璧としか言いようがない。

 付け合わせに出された、ニンジンのグラッセさえも、只の脇役ではない。見栄えを良くするためのおまけでは無い。一度齧れば、野菜の甘味とほんのりと感じる塩味が口の中をリセットしてくれる。


「ぷ、ぷはぁー。美味かったぁ」


 時間にして十分ぐらいだろうか?

 ステーキを乗せていた鉄板プレートの上にはもう、小さな肉片一つすら残っていない。

 完食。文句なしの完食であり、そして、まさしく『真剣勝負』だった。出された最高の肉を、余すところなく味わうための、『真剣勝負』である。それを、強制させるのではなく、自然と姿勢を正して挑ませてしまうだけの魅力が、このステーキには合ったのだ。


「マスター! 美味かったです! そして、師匠! ごちになります!!」

「そうか。ならば、よかった」

「ははははは、このハゲに随分ぼったくられたが、まぁ、良しとしてやるぜ。今は気分が良いからな」


 あ、そういえば。ステーキを食べることに夢中で全然意識を向けていなかったけれど、師匠とマスターが何やら話していたみたいだが、一体、どんなことを話していたのだろうか? 師匠の機嫌が良い時は大抵、ろくでもないことになるのだけれど。


「さて、食い終わったなら、ちょういと師匠の話を聞け、弟子」

「うぃっす。なんでしょうか?」

「――――失恋を乗り越える方法を教えてやる」


 にやにやとした顔で師匠に言われて、俺は猛烈に嫌な予感がした。

 ばっ、と慌ててマスターに視線を移すと、そこにはいつもよりも憐れみを込めた無表情を俺に向けるマスターの姿が。


「マスターに言いやがったな、クソ師匠!」

「そりゃ言うわ。こんな面白いネタがあったなら、そりゃ言うわな」

「…………鈴木少年。まさか、あいつ以外にあの馬鹿に惚れる奴がいるとは思わなかったんだ。すまん。その、気付いてやれなくて」

「ああああああああああああああっ!!」


 俺は即座に発狂して師匠に殴り掛かるが、あっさりと受け止められた上、周りの椅子やテーブルに配慮されながら地面に叩きつけられてしまう。


「う、うう……職場には言わないで欲しかった」

「馬鹿テメェ、そういうのを気にしているから、何時まで経っても湿気た面してんだよ。胸を張って、報告しとけ」

「失恋したのに胸は張れない……」

「そんなクソッタレの弟子に、俺と黒鉄からの助言だ。いいか、良く聞けよ?」


 師匠は床に転がる俺を足蹴にすると、凶悪極まりないドヤ顔で俺に告げた。


「良い男は、失恋で立ち止まらねぇ。失恋してもなお、男を磨くんだよ。わかるか?」

「…………そ、それで相手を諦められるんですか?」

「違う。考え方がネガティブなんだよ、クソ童貞が」


 戸惑う俺を、師匠はげらげらと笑い、見下して言う。


「振られた女よりも良い女を捕まえて、モノにするために決まってんだろうが」

「…………っ」

「教えてやるぜ、クソ弟子。良い男ってのはな、振られても上を見るんだよ。下を見るな。俯くな。足りないと思ったなら、足していけ。それだけできりゃ、多少はマシになる」

「し、師匠……俺は」

「言うな。いい、言いたいことは分かっている……俺はテメェの師匠だからな」

「師匠……っ!」


 見下し笑いから一転、師匠は慈悲ある笑みを浮かべて俺に手を差し伸べてくれた。

 俺は感動に打ち震えながらも、そっとその手を取る。

 う、うう、てっきり人の不幸を嘲笑いながらとことん馬鹿にするクソ外道だと思っていたんですけれど、違ったんですね、師匠! 師匠にもまともな人としての感性が残っていたんですね! 俺、嬉しいよ……。


「そんなわけで、明日からはテメェの男を磨くために修業のレベルを上げるからな」

「えっ?」

「安心しろ。戦闘だけ出来る脳筋野郎にするつもりはねぇ。戦闘以外の交渉、潜入、その他あらゆる技能は、このハゲ――『錆砕きの黒鉄』が担当するからな」


 なにその二つ名、初耳なんですけどぉ!

 俺は驚愕を込めてマスターに視線を向けるのだが、マスターは無表情のまま、何を勘違いしたのか力強く頷いた。


「任せろ、鈴木少年。君をただのバイトでは終わらせない……ゆくゆくは、この俺の代理を務めても問題ないほどに磨き上げてみせよう、君の才能を」

「マスター!?」

「やれやれ、幸運だな、クソ弟子。この俺と黒鉄に師事できるなんざ、裏の世界での栄光を約束されたもんだぜ? まぁ、仕上がらなかったら普通に死ぬが」

「裏世界とか! 死ぬとか! そういう言葉は使わないでいただきたい!」


 恋愛ラブコメぇええええええ!! と叫びながらこの領域からの脱出を試みるが、あえなく失敗。格上の二人に囲まれた時点で、詰んでいるんだよなぁ。


「いやだぁあああああ! 俺は! 恋愛ラブコメみたいな人生を送りたいんだぁああああ!!」

「鏡を見て言えよ、クソ弟子」

「心配するな、鈴木少年。腕の良い闇医者を知っている」


 こうして俺は、失恋を乗り越えるために更なる修業に挑むのであった。

 …………そろそろ、死ぬかもしれんな、俺。

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俺はどこにでもいるクソ童貞 ロッカー・斎藤 @kusomushi

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