一滴の思い出

@ouka_0708

第1話 狂った人

この物語を手にとってくれた貴方は戻りたい過去はありますか?


どこかの偉い人は言ったそうです。

「今日も毎日という宝箱を開ける」

私はこの言葉の意味はこう解釈しています。

私達が何気なく過ごしてる毎日は何が起こるかわからない、どんなに楽しいことが悲しいことがいつ自分を襲うか

だから毎日を期待して過ごそう。


あなたがこれから始まる物語を読み終えた時今までの人生を振り返ってみて下さい。







2018年6月25日の事だ。

「今日も暑いなぁーなんか飲み物出してくれよ」

高校三年生の僕、心機 雨は生温い空気を吸いながら友達の家のソファーに飛び込みながら寝そべった

「全く…学校では真面目なのに。だから振られるんじゃないのか?」

友達でありバンドメンバーである海風 龍は皮肉を言いながらも飲み物を取ってきてくれた。

「うるさいなぁ、彼女も作らないお前に言われたくないよ。てかお前バンドのボーカルだろ?告白とかされねぇのかよ」

龍は何も悔しそうな顔をして近くの雑誌を読み始めた。


僕と龍は高校の入学式でたまたま隣の席で仲良くなった。後から考えてみるとここで彼と僕が出会っていなければ音楽以外趣味が合わない僕等は死ぬまで話す事は無かっただろう。


龍は僕とは対照的な人だった。

顔はいいし性格も愛されるような太陽のような奴だ。

だが僕は、自分でもうんざりするくらい人嫌いで愛想が悪い正に月と太陽の関係とも言いたいところだが僕は月ほど美しいとはお世辞でも言えない。

これまで龍が僕とバンドを組み二年次からクラスが離れても一緒に居てくれるのはとても不思議に思えた。


「なあ雨、奏は何時に駅に着くって?」


「今日は部活のミーティングがあるから一本遅いんじゃない?三年の6月で忙しいってのによくやるよな」


「まぁキャプテンだし仕方ないか」


僕らのバンドはスリーピースでギターボーカルは龍、ベースは僕、ドラムは先程話に出てきたサッカー部のキャプテンである奏だ。

本当はもう一人ギターがいたのだが入学すぐにクラスの男子がいじめを始めたせいで一年の夏に僕らを置いて学校を辞めてしまった。


一年の夏はみんな高校生という環境に慣れるのが大変でメンバー同士で話し合う機会どころか集まる事も多くなかった。だが必死に奏と龍はその子を引きとめようとしていた。

僕は引きとめるどころか彼のいじめを悪化させてしまい結果的に僕が彼を追い出した扱いになっていた。

だがその事について龍と奏は何も言わず何事もなかったように僕と関わってくれたがどこか二人との間に透明な板の壁が出来てしまった様に思える。


「なぁ雨次の学校でやる曲どーする?」


僕たちの学校は軽音部がない代わりに音楽担当の先生に演奏を聴いてもらい認められれば学校の音楽室で定期的にライブをする事が許されていて一年の頃フルメンバーだった時に先生に認められてから二ヶ月に一度三曲程度のライブをやらせてもらえていた。


「んー流行りの曲も飽きたしそろそろオリジナルでもやりたいよな」


なら良いのがあるぜ!と龍はいきなり奥の部屋に向かい見覚えのない薄緑のファイルだ。


「これ!一年の頃に俺と奏で作った曲なんだ作詞は奏で…っておい!」


一年の頃と俺と奏だけでつくった曲それだけでどうしようもなく行き場の無い感情が込み上げ、僕は龍を突き飛ばしファイルを奪い取り自転車で家から飛び出した。


これから奏が来て、下らない事を話してバンド練習…だったのに。


「なんだよこの曲、やっぱり俺なんか要らなかったのかよ!」


感情のままに自転車を漕ぎ、進めば進むほど日常生活のさまざまなストレスが動力源となりスピードがみるみる速くなっていき先程までは多少整備されてた中道を抜け大通りに出てしまった。

その時一匹の野良猫が目の前に飛び出して来た、かろうじて避ける事が出来たが、僕の人生は終わってしまった。


意識が遠のく中僕が飛び出して来た猫が僕に寄り添って来たところまではたしかに憶えている。


だが僕は何故か死んではおらず、いや死んでいる死んでいなければおかしいそんなファンタジーや漫画の世界じゃなければこんな事は起きない。


でも起きるならこんな所ではなくもっとドラゴンや人よりも大きく惨虐な魔王の住む世界に飛ばしてほしかった。


僕は何故か地獄でもなく病院でもなくファンタジーな世界でもない僕が通う学校の図書室にいたしかも薄緑のファイルも一緒に。

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