第2話

私はドアを開けました。


「やあ」


私は腑抜けた声でそう言った彼の顔をひっぱたきました。


「いいかげんにしてよ、このストーカー!」


私はそのまま部屋を飛び出しました。


エレベーターを降り、マンションの外に出ると上から「おい!」と言う声が聞こえて来ました。


見上げると、彼が私の部屋のベランダに立っていたのです。


しかも立っていただけではありませんでした。


驚いたことにベランダを乗り越えようとしているではありませんか。


私は驚きました。


なにせ私の部屋は八階にあるのですから。


そんなところから飛び降りたら死んでしまいます。


でも彼は飛び降りました。


その結果は言うまでもありません。


ほどなくして救急車、警察、近所の人が中心の野次馬で、その場はあふれかえりました。


その後は警察の人に事情を聞かれたり、近所の主婦が何人も訪ねて来たりと、いろいろと大変でした。


でももう一つ、もっと大変なことがあります。


それは、彼は飛び降りるのが一回では満足せずに、あの日以来毎日必ず私のベランダから飛び降りているのですから。



          終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

失意の果てに ツヨシ @kunkunkonkon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ