第62話
もうすぐ、夏休みが終わる。
ギラギラ照りつける太陽の強さを肌で感じながら、
そして
彼らはこの時代には在ってはならない存在なのだと、
彼らの身体は、
詳しい事は
その場に立ち会いたいと
その代わりにと、
その渡されたものを、
もう何度押したか分からない、ソレの再生ボタンを押す。
ソレ──ボイスレコーダーからは、少しの無言の後から落ち着いた渋い声が紡ぎ出された。
『この音声は、私が機能停止後にマスターに渡すようにと、
この音声を再生しているという事は、既に私はマスターの側にはいないという事で、その前提で話をさせて頂きます。
現時点で、私は貴女の犯したという間違いを修正できたのかどうかの判断ができません。
しかし、出来たのだと、私は思っています。
私の活動限界はそろそろ訪れます。
この時代に来る前の時代で、バッテリーを一部破損してしまった為、充分な充電も行う事が出来ず──
ダメですね。私は説明が増長で無駄が多いと、よく貴女から叱られておりました。
兎に角、貴女の側には長くはいられないでしょう。
私は、長く活動し続けました。長く貴女の側に居続けました。
本来ある耐用期間を遥かに超えて。
貴女の間違いが修正出来たとしたら、私の役割は終わる筈ですが……私は役割を超えて、耐用期間を更に超えて……貴女の側に居続けたいと思うのです。
これは間違いであり、不可能であると、中枢装置で判定されております。
間違いであり不可能であるにも関わらず……何故か……私は、願わずにはいられないのです。
貴女の側に居続けたい、と。
これは、何処から発生した、何という物なのでしょうか?
判定できません。
此の所、故障によるせいなのか、論理的に説明つかない事ばかりが起こります。
──マスターは、『魂』という存在を信じますか?
長年愛用した物には、魂が宿るのだと。
私にも──魂が宿ると良い、そう思っていますが、実際のところどうなのでしょうね?
魂は、いつ宿るのでしょうか?
魂は不滅だと聞きました。
願わくば、それが既に宿っておりますように。
そうだとしたら──
例え私が壊れても、貴女の側に、ずっといられますから──
──』
再生がそこで終わる。
「魂、宿ってたよ。
だって、そばに感じてるもん」
空を見上げて、眩しく肌を焼く太陽に目を細める。
自分にはまだやる事がある。
これから、日本の未来を救うのだ。
どんな物を作りたいのか、具体的なイメージはもう出来ている。
あとは、それを少しずつ形にするだけ。
自分には味方が沢山いる。
ITに強い
賢く
今回の事で本格的にロボット工学の勉強を始めた
進路の相談に真摯に向き合ってくれる
中学2年の夏休み。
確かに自分の人生の方向が決まった事を、
その未来を見据えて、
力強く走っていった。
例え私が──ても、 牧野 麻也 @kayazou
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