1.12 僕らが集結
雑魚寝していた各々が起き上がる。前夜祭を程々にしつつも、酔ってそのまま眠るものもいれば、作業をしてから寝るものもいた。先にシャワーを浴びるとバスルームに向かった首藤が誤って桐谷の太ももを踏んづけてしまう。
「いってーすよ!」
「おお、ごめんごめん、ほんとに見えてなくて。シャワー行ってくるわ。」
吉岡は桐谷の叫び声を聞いて、のっそりと起き上がる。遮光カーテンから外を除くととてつもなく眩しい。日光が海に反射してキラキラと光り輝く。他のメンバーも朝の挨拶を交わしながら、起き出す。
冷蔵庫からコーヒーを取り出して飲むものもいれば、前日に購入していたパンを食べるものもいる。吉岡は大人になって、こうしてエンジニア同士、いや、ハッカー同士が集まってパソコンを使ってガリガリやるのも不思議な集まりよな、と考えた。
頭がある程度シャキっとしてきたところで、吉岡のスマートフォンが鳴る。
「・・・・おう・・・おー!・・・わかった。ほな待っとるわ。」
「もしかして、他のメンバーすか?」
桐谷が服を着替えながら言う。
「せや。豊洲駅に着いたみたいやから、あと数分もしたら着くぽい。着いたら、いったん上まで連れてくるから、適度に片付けておかなな。その後にミーティングやって、他のフロアを見回りにいこう。」
「昨日、掃除ロボット使って他のフロアを走らせてみたんすけど、別に異常はないっすね!特にセンサーは反応してないっす!」
加川はパソコンに飛ばしている掃除ロボットのセンサーデータを見ながら答えた。
各自がこのあとの行動に向けて、器材を詰めたジャンパーバッグを用意している。この部屋に今夜からは女性もくることになるが、ここがリビングで広々としていて、幸い他にも部屋はいくつかある。やはり芸能人が住むマンションはすごいものだ。
「SMSで通知が来た。下に着いたぽいから、行ってくるわ。」
そういって、吉岡は下に降りていく。
しばらくして、階段のほうから男女の賑やかな話し声が聞こえてきた。
「どうもですー!」
「んちゃっす。」
「どうもです。」
「きたよー!」
「おはようございます、かな?」
吉岡は簡単に部屋の説明をしたところで、荷物をひとまず置いてくれればいいと指示した。この中ではダントツに中馬の荷物が多い。村下もだ。女性は比較的コンパクトな荷物でしかない。桐谷が中馬にとっさに質問した。
「ジャンパーバッグ以外に、なんすかそのロケットランチャーのようなサイズのケースは。」
「あー、これ、食材。IH使えるって聞いてたし、レトルトだけで一週間を過ごすのもね。朝昼晩はよければ俺がみんなのご飯作りますよ!」
「え!それはいいっすね!あ、じゃあ、ご飯のお金とか後で払わないと。」
「あー、それはわいが建て替えるから。」
そういって、吉岡が親指を立ててみせた。
「え、いいんですか?ほんとに。」
「かまへん、かまへん。最近、仮想通貨で稼がせてもろとってな。」
そういって、吉岡は親指と人差し指で丸を作ってみせる。
「じゃあ、ゴチになります!」
「なります!」
桐谷以外にも何人かが同じことを言う。吉岡はまたも親指を立てた。
「さあ、ほな今日から一週間、共同生活していくんとともに、悪い奴らを抹殺していくで!」
「社会的にな」
「社会的に抹殺していくで!」
首藤が相槌を打ってくれた。そうです、人は殺しちゃいけません。
僕らの七日間サイバー戦争 射手 由宇 @typhon666_death
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