飴と傘
和史
飴と傘
梅雨明け、日差しは強さを増してはいるものの、風は爽やかで
私は供え物の水菓子を手に、駅へと向かっていた。
道中には小さな橋があり、その橋の中ほどから眺める景色は春には絶景の桜並木になる。今は青々とした並木がずっと向こうまで続いている。小さい頃はここからの眺めが好きで、よく母に連れてきてもらったものだった。
そんなことをぼんやりと思い出しながら
白い帽子をかぶった幼稚園児ぐらいだろうか、男の子はそこから動こうとしないようだった。
白い
その光景に、同じぐらい幼かった頃の思い出が
その日もとても晴れた日で、母は同じ様な白の
私はというと、玄関先で靴も履かずに出かけるのを愚図っていた。
昨日新しく買ってもらった色鉛筆で数分前まで機嫌よく絵を描いていたのだが、有無を言わさず窮屈な服に着替えさせられ、これから出かけると言う。母の友人の結婚式らしかったのだが、小さな子供にとって、それがどれだけめでたく大切な事なのかなど分かる
私は本能に従って機嫌を損ね、
私の頑固は母も承知で、これは時間がかかると思ったのだろう、早々に奥の手を出してきた。
母は私の前に座ると、
さあ、どの飴がいいかな?
と、そっぽを向いている私の前にそれをちらつかせた。
これはね、魔法の飴なのよ。
魔法?
そうよ。
この
うそだい。
うそなんかじゃないわ。この渦潮模様の
じゃあ、この綺麗な水色のは?
私はいつのまにか母に体ごと向き直って話していた。
「これは
そう言うと母は、瓶からその透明な宝石を取り出すと、一粒、私の口へと放り込んだ。口いっぱいに頬張る飴は確かにシュワリと、甘いソーダの味がした。
先ほどまで愚図ついていた子供は、いつの間にか私の前を通り過ぎていた。白い
飴と傘 和史 @-5c
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