妄想爆発もふもふ公園

凍った鍋敷き

妄想爆発もふもふ公園

もふもふ公園を、知っているかい?



いや、ま、知ってるわけないよね。私の頭の中にある妄想公園だから。

でも、この公園自体は存在するんだ。

妄想はその中身さ。



この公園。

自宅から駅まで歩く通勤ルート上に存在する。

左手に小学校を眺めながら歩く一方通行の道路の右手にある、ベンチとブランコと鉄棒と砂場しかない、キャッチボールもできなさそうな、小さな公園だ。

その公園の前を歩いて通り過ぎるのに約5秒。

その5秒で妄想が爆発するのさ。



なんの妄想かと言えば、猫だ!

狂犬病の脅威のために野良犬が姿を消して、住宅街は猫の支配下に落ちた。

団地や戸建ての林立するただなかに、ポツンとある公園は、絶好の日光浴ができる場所であり、車も入ってこない安全地帯だ。

烏というライバルは残っているが、猫はこの世の春を満喫している、ように見える。



さてそのもふもふ公園だが、そこにおわす猫様は3匹、いや3頭というべきか?

人間が抱えられないようなデカイ生き物を数える時に【頭】を使うらしいのでここは【匹】を使おう。



もふもふ公園にて謁見できる猫様は薄茶ブチ、黒猫、虎猫だ。

薄茶ブチは大抵ベンチで人生、いや猫生を謳歌しておられる。神々しくもなく、べしゃっと潰れて、全身で怠惰をアピールするがごとくの日光浴っぷりだ。

魔王とはこの猫様のことを指す言葉だろう。

仕事に向かっているチンケな私などとは次元が違うのだッ。



ついで黒だが、この猫様はいたりいなかったりと、やはり自由な猫生を謳歌しておられるようだ。

各所に愛猫でもいるのかもしれない。

プレイボーイとは、かの猫のためにある言葉だろう。

控えめに言って、美の化身ビーナスか。

性別は知らないけど。



最後に虎猫だ。

この猫様が一番の働き者で、我々人間の行動を監視するがごとく、公園の入り口にドデっと寝っころがって顔だけ持ち上げて睥睨しているのだ。

「おぅおぅ、お前らあくせく働けよ? 俺は寝てるけどな!」

と不遜極まりない態度である。


さすが猫様である。

この世で一番なのは俺様たち猫なんだよ、という選民思想がぷんぷん漂っている。

まぁ、猫様なので、これが通常運転だ。



しかし、こんなブッダをも怒らせるような態度も、猫様は許されてしまう。

何故か?

それは、猫様だからだ!


……答えになっていないが、これがすべてだ。


溢れんばかりの可愛らしさを誇る、その御顔。

構ってチャンを演ずる、そのふてぶてしさ。

ファンシー極まりない、その肉球。

羽毛布団など裸足で逃げ出す、そのもふもふ。



我々人間を虜にして止まない要素を備え持つ、P・F・Oパーフェクト・ファニー・オブジェクトなのである。

これ見よがしに足に体を擦りつけて歩く魅惑のウォーキングなどされた日には、我が魂はユグドラシルへと旅立つだろう。

多分帰ってこない。



腹を撫でろ、と命ずるようにごろりとされては、我が本能は抗えない。

だらしなく緩んだ頬を世間様に開陳しながらも、その絹よりもさらさらすべすべな感触を、指がすり抜ける快感に酔う、至福の時を過ごすだろう。

指を、そして掌をくすぐるような軟軟なもふもふ。

桃源郷を突き抜けて。ブラックホールをぶち壊し。勢い余って平行世界にコンニチハしてしまう程の、破壊力だ。



あァたまらん!

お代わりを所望する!

ちょっとそこの猫様、君もここで寝転んでくれないか?



アァ、イイ!

サイコーだ!

猫ハーレムの出来上がりさぁ!



などという妄想を、時間にして僅か5秒で完了する。

ギャバ○の蒸着には負けるが。

そして私は湧き上がる活力を得て、ツマラナイ日常に戻るのだ。



うむ、変態と言われれば否定はしない。

むしろナジッてくれてもいい。

だって、私は度し難いネコスキーだもの。

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