楔蝦蟆

安良巻祐介

 

 背に楔模様のある蝦蟆のことを楔蝦蟆という。そのまますぎるがまあ仕方がない。田舎の方では不吉の象徴とされ道で見かけたら下駄で踏み殺すように伝えているとかいう。啼き声は犬に似ておりボウボウ吠える。背には楔模様の他に毒腺もあって触るとかぶれる。指の皮が白くぼろぼろになってひどいと手袋を嵌めていないのに手袋を嵌めてしかもそれが破けているような見た目になる。案山子が立っている田んぼによく出るそうだが、理由はよくわからない。目玉は蛙にしては小さくて白目の部分が大きいのも気味悪がられる理由だと思う。加えて、人がいると逃げるのではなく寄ってくる、という習性もなにか曰くつきを感じさせるのか。一説には案山子と間違えているのだとも言うが、いや案山子の方を普段人間と間違えているのだという話もあって、非常にややこしく、また得体が知れない。――『蜃里幻聞記』を読んで

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楔蝦蟆 安良巻祐介 @aramaki88

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