こわい女

maily

始まりはここからかな

朝倉と申します。よろしくお願いします。

え?下の名前?……麻紀です。もう28ですし、下の名前で呼ばれる柄ではないので朝倉と呼んでください。


ーそう言って目線を逸らした彼女は、少し気まずそうな顔をした。

私からみたらまだ若いので、下の名前をちゃん付けで呼んでもいいくらいだけど…。


咳払いをしながら彼女が椅子に座りなおすと、ギシッと音がした。

ここで本題に入る。


すいません、はい、今日ここに来させて頂いたのはネットで見て…。病院に行くほどではないけれど、悩んでいたので…。

あの、えっと、なんだろ……

あ…ちょっと待って下さいね。言いたい事、紙に書いてきたんです。


朝倉はバッグから財布を取り出し、お札入れからメモを出した。


そうだこれこれ…。えっと、私、結婚してから性格が変わった様な気がして困っていたんです。

でも、その変わってしまったと思っている性格が本当の自分で、結婚前の自分が偽物だったのかなって。

なんでそんな事で相談に来たかと言うのは、結婚前の方が、うーん…、自分で言うのもアレなんですけど、穏やかで優しかったと思うんです。ほんと、あの、えっと…思い返すと…ですけどね。周りがどう思ってたかは分かりませんが…。

それで、その性格の時に今の旦那さんに出会って、穏やかな私を好きになってくれたと思うんですけど、なぜか結婚してからは怒ってばかりの自分がいて…

旦那さんからしたら、優しい嫁かと思ったら鬼嫁で詐欺に遭った気分だろうなーって。

それで、私自身もあんまり怒りたくなくて…前の性格に戻ろうと意識をするんですけど、なかなか戻れなくて、気に入らないことがあると怒ってしまうんです。えっと、それで………


一気に話して呼吸を忘れたのか、朝倉の鼻がぷくりと膨らんだ。私に気付かれないようにと呼吸を整える姿を見て思った。結婚前の穏やかな性格とやらは、人に気を使う性分だったからだろう。

話し方にも、それが伝わる。多分朝倉は話すのが苦手だ。けれど、その場にいなかった人にできるだけ鮮明に、雰囲気や自分の感じてることを伝えたくて一生懸命話す。それは、自分のことを知ってほしい!という我の強さより、相手にわかるように説明しないと相手が困るかもしれないから。という感じだろう。


それで…、私どうしてこんな風になっちゃったのかなって。どうしたら、穏やかに戻れるかなって。カウンセリングを受けて、少しずつ何か変われば良いなと思ったんです。


朝倉の頭の中は、いつもゴチャゴチャしているのだろう。、これらがきっとバラバラで……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こわい女 maily @ella

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ