第4話 真っ直ぐに傾け
「河田ァあああああああああ!! 病んでますかぁあああああああああ!?」
翌日。いつもの朝が始まった。
生徒玄関でばったり顔を突き合わせた澤田は通常運転で、高木はその勢いに気圧され、さらには澤田に押し退けられて「おうっ」と仰け反る。
「澤田、おはよう。今日ちょっと遅いな」
「フルっフゥうううううううう!!」
「あー、そりゃ大変だな。朝からおつかれ」
「一応聞くけどなにごと?」
「カバン忘れてるのに途中で気づいたって」
「理解力高いなカバン振りかざしただけでなんで分かる!? あと澤田お前何しにきてんの!?」
高木のツッコミに「ええい喧しいズレメンが!!」と言い放つ澤田は楽しそうだ。
やりとりを眺めながら上がる階段は、まったく苦にならない。
たとえばそのままたどり着いた教室の空気が、昨日と違って一部ギスギスしていたとしてもそれは同じで、
「ねえ、ちょっと澤田、ツラ貸してくれる?」
「カバンの中身と一緒に忘れてきた。高木おまえ貸せ」
「ブサイクの顔なんかいらねーよ!!」
「なんだこの玉突き事故ッ!!」
「いいからツラ貸せって言って……」
「おいビケイ澤田ァ!! 挨拶もなしにあたしのおにぎりに名前書いてんじゃねーよ!!」
「失敬なよく見ろ!! 日付と時間と一緒におはようと書いてあるだろうが!!」
「そんなコンシェルジュ機能、心底いらなかった!!」
例の彼女の取り巻きが寄ってきて早々、迎え撃ちながら席につく。
事の行方を見守っていた他のクラスメイトが、かじかんだみたいにぎこちなかったのが、緩やかに動き出す。
いつもの女子と澤田が、取り巻きもそっちのけでいつも通りのスキンシップを始める。
誰かが窓を開けた。
流れてきた風が最後の昨日を、洗ってくれているみたいだった。
ビケイ男子 了
2015/06/19
ビケイ男子 小宮雪末 @nukanikugi
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