男子校だけどハーレム築いてやらぁ!

@nakashow

第1話

上を見上げれば雲ひとつない完璧な青と輝く太陽が空を支配している。


少年は深呼吸を2回繰り返した後走り出し、仲間の思いを胸に屋上から跳んだ。


そして自分の高校と向かいの高校を遮る金網に捕まりその頂点を目指し登る。金網の頂点の狭い足場に立つと再び跳ぶ。なんとか向かいの高校の屋上に転がり落ち痛みを感じるよりも前に校内に侵入することに成功した。


今は授業中ということもあり校内はいたって静かだ。慣れた動きで階段の手すりを使い滑り降り、目的の部屋へと足を早める。途中で生徒に見つかったがそれを振り切り、目的の生徒会室の扉を開けた。


そして一歩一歩とその玉座に座る銀髪の生徒会長に膝を地につけ、頭を擦り付ける。ひとつの願いを言うために。


「我が米高と聖零学園の再合併の検討をよろしくお願いしまぁぁぁぁぁぁすぅぅぅぅぅ!!」

「却下です」


女王は少年の魂の叫びをまるで幼子の駄々の様に聞き流した。


遡る事40年前。私立白米工業高校と私立聖零学園の2つの高等学校がひとつの金網を隔てて隣同士にありましたとさ。ですが白米高校、略して米高は男子校。聖零学園は女子校だったために関係はあまりありませんでしたが生徒の深刻な不足人数のためにやむを得なく合併し私立聖零高校と名を変えました。


しかし合併後の偏差値や学校生活の評判が下がりつつあった為私立聖零高校は10年の歴史に幕を下ろしました。


米高の2年の教室では先程聖零に忍び込んだ少年が仲間に頭を下げる。


「すまん!今回もダメだった!」

「よせ。何もお前のせいじゃなあない」


“草元アツキ”が少年の頭を撫でて慰める。


「そうだぞ。どう頑張ってもあっちの生徒会長さんは俺たちの話を聞く気はないらしいからな」


現状に“中林タツ”は頭を抱えた。


「だが俺達はここで折れるわけにゃあいかねえんだ」「どうするんだよ。俺らに残されたのはあと2年間だけだ」

「俺の幼馴染が聖零に通ってるんだ。そいつと一回話をしてみる」


その発言にアツキとタツは思わず立ち上がってしまった。自分達の目標を相手に伝えるなど自滅行為にもほどがあるからだ。


「もちろん口止めはしておく。あいつなら守ってくれるからな」


ほっと息をつく。


「いいかみんな。俺達の目標はただ一つ」


少年は教卓へと足を運び威風堂々と仲間クラスメイトの前に立ち、宣言する。


「俺達は男子校だ。だからといって俺は夢を諦めるつもりはねぇ。俺達の目標はただ一つ!」


一回、つばを飲み喉を整える。


「今まで不可能と言われた男子校で男1、女多数のハーレムを作ることだぁぁぁぁぁぁ!!」


その宣言にクラスがロックバンドのライブ会場の様に沸く。


「今に見てろ聖零学園の女子達よ!!この俺“丸本リョウ”があの忌々しき金網をぶっ壊して女子達てめえらのハートを貫いてやるよ!!男子校だけどハーレム作ってやらぁ!!」


この物語は丸本リョウが仲間と共に夢を叶えに行く物語である。


第2話 NHK作戦


俺の名前は丸本リョウ。唐突だが俺には夢がある。


そう、全ての男子の憧れであるハーレムを築くことだ。だが全員が同じ様な女子では俺も退屈してしまう。だから俺は違うタイプの女子を集めて俺得ハーレムを築く。


まず俺得ハーレム候補その1。女神ヘラのように俺を愛する女子。その候補が今隣にいる幼馴染の女子だ。


「リョー?目が遠くなってるよ」

「お。わりい。説明してた」

「説明…何を?」

「お前には関係ないさ」


錦戸アイメ。年齢は俺と同じの聖零学園2年生の16歳で頭は良く運動も人並みには出来るしそのルックスの良さから中学時代からの永遠のマドンナだ。米高の低偏差値とは違いお嬢様教育に評判のある聖零に入ってからは益々可愛くなった気がしてならない。ちなみに先日言った聖零に通っている幼馴染とはこいつのことだ。


「っと、じゃあ俺こっちだから」

「うん。また帰り」


さてと、先程候補がなんたらと言ったがぶっちゃけあんまり決まってないんだ。とりあえず決まっているのがさっき言ったアイメと聖零の生徒会長の鏡原シイナぐらい。後はじっくりと探させてもらうか。


教室の戸を開けカバンから筆記用具を取り出し教科書類を机の中にぶち込み工業実習関係のものを机に引っ掛ける。


アツキとタツがまだ登校していないようなので一枚の紙をすっと椅子の上へと置く。


やつらが来るまでは今回の作戦の最終確認でもして置くか。


昼休みの屋上はいいものだ。あまり人が来ずに青空の下で作戦を練ることができる最高の場所なのだから。

弁当箱を開けてリョウが米を口に運んだ瞬間には作戦会議はもうすでに始まっている。


「リョウよ。今回の作戦はなんなんだ」


タツが問う。


「そこに書いたある通りだ。今回の作戦は」


『Natural《ナチュラル》Harem Kit《ハーレム キット》作戦、略してNHK作戦だ!!』


「「え、NHK作戦だとぉ!!」」

「そうだ。以下にナチュラルにハーレムを作れるかがこの勝負の見せ所よ!」


((いや、名前的に大丈夫かよ))


「じゃあこのキットってのはなんだ」


今度はアツキが問う。


「キットっていうのは教材とかそんな感じのやつだ。今回参考にしたのはこれだ!」


リョウは懐から一冊の本を取り出して見せつける。


「こ、これは今話題の異世界転生ものの小説じゃあないかっ!」

「最近の本では別の世界に転生して無双してるだけで女がホイホイ集まって来るらしいんだ」

「つまり俺達は転生するために死ねばいいのか」

「さっすがタツ!物分かりがいいねぇ!」

「いや物分かりがいいねぇじゃねえよッ!死ぬとかやなんだけど!せめて現実世界のラブコメ系にしてよ!」

「アツキはうるさいなー」

「だって死にたくねえんだよ未練めっちゃあるんだよ!この本の主人公達見たいに『あ、死んじゃったなー。まーいーやー』じゃねえんだよ!」

「落ち着けよアツキ。リョウもだ」

「えー、転生ダメ?」

「転生はダメだが異世界“転移”ならいいんじゃないかな」

「さっすがタツ冴えてるぅ!」

「お前ら異世界から離れろやァァァァァァァァァァァァァァ!!ここは地球!アース!日本!中部地方!米高!異世界に通じるものなんてあるわけねえだろぉぉぉ!」


ツッコミの声量の調整が出来なかったアツキは息を切らして声とは呼べない音で会話をする。


「俺、先行ってるわ」

「そっか。じゃあ俺達も後で行くわ」


アツキが喉を抑えながら屋上のドアを開けるとそこには


中世の景色を感じさせ、猫の耳が生えた女性やチーターのような男性の獣人にもちろん普通の人間もいる。唯一違うと言えば剣持ってたり杖持ってたりするぐらいだ。


3人は口を揃えてこう言った。


異世界、繋がっちった。

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