第2話 ・・・瞬間移動!?
くさっ。鼻の中に広がる
体をはたきながら自分の状態を確認する。服はTシャツにハーフパンツ。これは俺の部屋にいた時に着ていた物だ。足は裸足。足の裏の
次に周囲を確認する。床に散らばる
誰もいない小屋の通路をひたひたと歩く。歩きながら思う。ああ、おそらくこの小屋はしばらく使われていないなと。その証拠に
そーっと出口から顔を出す。目に飛び込んでくる田園風景。田舎の集落だろうか。ドクン。俺のいた家畜小屋のとなりには小さな家が1軒。だが、とてもじゃないが人が住んでいる様子はない。周囲に広がる田畑も手入れをされている様子がなく、雑草が伸び放題になっている。ドクン。ドクン。周辺には所々民家や家畜小屋が見えるが、そのどれもが酷く朽ちていた。人の気配は全くしない。それどころか俺はこの田園風景に見覚えが全くない。まして俺が住んでいたアパートは都市部。周囲数十キロメートル以内にこんなのどかな田舎集落はなかったはずだ。ドクン。ドクン。ドクン。心臓の鼓動がすさまじく大きく、速くなっていく。確定だ。俺は・・・瞬間移動したのだ。
瞬間移動したと分かった時、あんたならどう思う?興奮する?歓喜する?恐れる?俺の場合は恐怖が6、7割。残りはめんどくささだった。だってそうだろ?さっきまで俺は、便利な都会のアパートの1室にいたんだ。それが今はよく分からん田舎に放り出されてる。そりゃあ、多少は暇を持て余してたが。だからといってこれはあんまりだ。極端すぎる。
こっからどうやって帰ればいいのか。いや帰れんのか。自分で。途方に暮れながら周囲を見る。キョロキョロ。焦った脳では何も見ることはできない。さっきと変わらず人気のない廃村。待てど暮らせど迎えが来てくれることもない。
仕方がないのでテキトーに歩き出す。土の上を裸足で歩く。小学生以来だ。いや、小学生の時もあまりこんな事はしなかったが。運動会の徒競走の時に、気合入れて運動場を裸足で走る奴とかいたよな?大人になって知らない農村の道を裸足で歩く。特に気合は入らなかった。
歩いていると、いくつかの建物を通り過ぎていく。そのどれもがやはり、人が住んでるようには見えないほどボロボロだった。もしかして本当に廃村なのか。この村には誰も住んでいない?
道を裸足で歩くことに自分の足が大分慣れた頃、俺はかなり落ち着きを取り戻していた。冷静になって周りを見ると、今まで見えなかった物が徐々に見えてくる。
ここは、海外かな、と何となく思った。通り過ぎる家の
どれほど歩いたか。初めは畑の中に家がポツポツとある程度だったのが、だんだんと家と家の間隔が狭くなっていく。そうして俺は建物が密集した広場のような所に
ここが村の中心地だろうか。広場に着いて俺は
ゴーストタウンに一人。ここで急に怖くなってきた。幽霊はあまり信じていなかったが。滅びた町。いや村か。村の死んでる感というのが何だか得体の知れない恐怖を
キョロキョロ。注意深く周囲に気を配りながら俺は広場を抜けていく。日本でいうところの田舎のJR駅周辺って感じだ。田んぼと畑と集落を抜けて、駅まで来ればその周囲にようやく小さな商店がある。そんな感じ。だが、
駅舎の前にはスペースがある。所々放置された馬車がある所を見ると、馬車乗り場なのだろう。乗合馬車的な?
この村は廃村になってどれくらいなんだろう?俺はこれまで見てきた村の様子からこの村が廃村になってからかなり時間が経っていると見ていた。
どこか建物の中にでも入ってみれば、ここがどこかとか、何で滅んだのかとか、色々手掛かりを
広場を半端にウロつきながら、どうしようかと悩んでいると、1本の道が目に入る。それは道というか隙間のような、人が一人通れるくらいの小さな道。広場の方から少し
さてどうするか。廃墟の暗闇と比べれば、こっちはまだ多少、
悩んだ末、ちょっと行ってみることにした。他にいい案もなかったし。ヤバけりゃすぐ引き返そう。そうしよう。俺は林の中に入っていった。
KAKUNOSHIN 氷川 真知 @hikawamachi
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